海外論文ピックアップ Lancet Oncology誌から
チェルノブイリの健康被害、最も深刻なのは精神面への影響
エビデンスありは小児の甲状腺癌のみ
大西 淳子=医学ジャーナリスト
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/hotnews/lancet/201105/519693.html魚拓)(魚拓2)(魚拓3

 チェルノブイリ原子力発電所の事故が住民の健康に及ぼした影響を長期にわたって評価してきた米Roswell Park Cancer InstituteのKirsten B Moysich氏らが、2011年4月26日付のLancet Oncology誌電子版にコメントを寄せた。同氏らは、自らの研究も含めてこの事故の健康被害の正確な評価が非常に難しいことと、その理由を説明した。さらに同誌のエディトリアルは、同日付で、チェルノブイリの事故が住民の健康に及ぼした最大の影響は精神面に表れたという報告を紹介している。

乳癌や小児の白血病増加の疫学調査は設計に問題

 Moysich氏らは、チェルノブイリ事故を以下のように概説している。

 1986年4月25日、チェルノブイリ原子力発電所の4号炉では非常用の電源システムの実験が行われようとしていた。この原子炉は、現在では使われていない旧式の黒鉛減速軽水冷却炉だった。実験のために不安定な状態に置かれていた原子炉は、実験開始をきっかけに急激に出力を増したが、原子炉冷却用の水は失われた状態にあり、過剰な発熱が生じて、4月26日未明に水蒸気爆発と炉心溶融に至った。

 福島第一原子力発電所と異なり、格納容器を持たなかったチェルノブイリ原子炉では、続く圧力容器の爆発によって大量の放射性物質が拡散した。大気中に放出された核燃料は8~180トン、核分裂生成物(放射性物質)は30億~90億キュリーと推定されており、それらは風に乗って北西方向に飛散した。事故後数日間、正確な線量測定が行われなかったため、放出された放射性物質の正確な量を知ることはできない。

 爆発により数人の作業員が死亡し、消火に当たった消防士100人が大量の放射性物質に曝露した。黒鉛は10日間燃え続け、放射性物質の放出は約20日間続いた。100~200人が急性放射線症候群と診断され、うち約30人が早期に死亡した。その後10年間にさらに14人が死亡している。

 事故の際に放出された核種は主に放射性のヨウ素131とセシウム134、セシウム137だった。ほかに、放射性のストロンチウム89とストロンチウム90、プルトニウム234も放出されている。ヨウ素131の半減期は8日と短いため食物連鎖の中に入り込んでも短期間のうちに減衰する。だが、セシウムの半減期は2年から30年と長く、非常に広範囲にわたる汚染が発生した。ストロンチウムは半減期が52日から28年で、セシウムと同様の長期的な汚染を引き起こした。

 事故によって放出された放射性物質の量は広島に投下された原爆の400倍だった。だが、実は、1950年代から60年代にかけて行われた核実験では、チェルノブイリ事故の100~1000倍の放射性物質が放出されたと著者らは言う。

 チェルノブイリから放出された放射性物質の影響が最も大きかったのは、ロシア、ウクライナ、ベラルーシだった。汚染が最も深刻だった近隣地域では住民27万人が軽度から中等度の曝露(被曝線量にすると5~500mSv)を受けた。

 チェルノブイリの事故がその後の癌罹患率を高めたかどうかを調べた論文は数多く存在する。著者らは、国連が最初に公表したチェルノブイリリポートの作成に参加し、02年には、それまでに報告された研究を対象に疫学的レビューを行ってLancet Oncology誌に報告している(概要はLancet誌のWebサイト参照)。著者らはこの時点で、小児の甲状腺癌を除いて事故後に癌の罹患率が上昇したことを示す強力なエビデンスはないと結論していた。

 著者らと同様に、チェルノブイリ事故による汚染と小児の甲状腺癌の関係を示した2件の集団ベースのケースコントロール研究はいずれも、対象となった個々の小児の被曝線量を詳細に調べ、十分に選び抜かれた精巧な統計学的アプローチを用いて分析していた。それ以前に提供されていたエビデンスと組み合わせると、チェルノブイリ事故の結果として小児の甲状腺癌罹患が増えたという結論に疑問を差し挟む余地はなく、得られた知見は、チェルノブイリ事故と同様の事態が発生した場合に安定ヨウ素剤を配布、使用を促すかどうかの判断に利用できる、と著者らは述べている。

 一方で著者らは、チェルノブイリ事故による健康被害を評価する際に直面する壁について論じている。著者らが05年に報告した、小児の白血病がベラルーシ、ウクライナ、ロシアで増加している可能性を示した研究結果(概要はInternational Journal of Epidemiology誌のWebサイトを参照)については、試験設計に問題があったことを認めた。分析対象となったコントロールの小児の多くが事故による汚染がなかった地域から選ばれていたため、分析によって示された事故後の白血病リスクの有意な上昇は納得のいくものではないという。さらに、旧ソ連の構成国で疫学調査を行うことの難しさが正確な評価を妨げた。当時、それらの国は長期的な疫学調査の経験をほとんど持っていなかった上に、言語の壁は厚く、文化的な差は大きかった。さらに調査の対象地域が非常に広範で、全てをカバーすることが困難だった。著者らは、それらの問題も含めて試験設計に欠陥があったと考えている。

 また、ベラルーシとウクライナでは乳癌の罹患率が上昇したという報告があるが、記述疫学研究の結果であること、この研究が居住地域の汚染度に基づいて患者の曝露放射線量を推定していたことから、乳癌との関係については今後再評価が必要としている。放射線曝露による肺癌リスク上昇を報告している研究もあるが、やはり試験設計上の欠陥がデータの信頼性や正当性を脅かしている上に、喫煙の影響を放射線曝露の影響から完全に切り離すことは不可能との見方を示した。

 福島原発の今後について、著者らは、放射性ヨウ素とセシウムへの曝露を最小限に抑えるための努力の重要性と、汚染地域の隔離の必要性を強調した。

 著者らは、「痛ましいことではあるが、日本で進行中の原子炉事故は、放射性物質への曝露が癌リスクに及ぼす影響を評価するための新たな機会を提供する。日本は放射線疫学研究の長い経験を持つため、適切な調査を行うことができるはずだ。チェルノブイリ後の疫学調査を難しくした大きな要因の1つがソ連の崩壊を中心とする政情不安だった。日本は、地震と津波、そして原発事故を経験しても、政治的にも経済的にも安定しており、原発事故が健康に及ぼす影響の総合的な調査が可能と期待される。得られるデータは、今後そうした事故が発生した場合に国民に正確なリスク予測を伝えるため、また、公衆衛生担当者が有効な介入を行うために役立つはずだ」と述べている。

 原題は「25 years after Chernobyl: lessons for Japan?」、全文が、Lancet誌のWebサイトで閲覧できる。

見逃されがちな住民への心理的影響
 Lancet Oncology誌のエディターは、同じ4月26日に電子版で公開されたエディトリアルで、以下のように述べている。

 原子炉事故後、長期にわたって懸念される最大の健康被害が癌の罹患だ。原爆の生存者や被曝事故の被害者を対象とする研究で、放射性物質への曝露と白血病その他の固形癌(甲状腺癌、消化器癌、乳癌、肺癌など)が関連付けられているが、周囲の立ち入り禁止区域が適切に設定されれば、そうしたリスクを負うのは原発作業員にほぼ限定されるだろう。

 原子炉を冷却するために使用された放射性物質を含む水が海に放出されたため、海産物の汚染が懸念されている。また、農作物や水道水の汚染も報告された。福島原発から放出された放射性物質は世界各国で検出されており、米国でも大気、雨水、牛乳からヨウ素131が検出されたが、米国当局は、検出レベルは低く、国民の健康に悪影響を及ぼすことはないと強調している。

 日本政府と東京電力は、特に事故後初期に正確な情報提供を行わなかったとして批判されている。政府が4月12日に、国際的な基準に基づく事故の評価をスリーマイル島の原子炉事故と同じレベル5からチェルノブイリと同一のレベル7に引き上げたことについても、遅すぎたとの非難を受けている。

 だが、原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)は、福島の事故は、環境への影響という観点からはスリーマイル島とチェルノブイリの事故の中間に位置するもので、住民の長期的な健康被害が深刻になることはないとの予測を示している。

 チェルノブイリと比較して住民が不安になるのも無理はないが、チェルノブイリの事故の健康への影響については一致した見解は得られていない。UNSCEARは08年に、小児の甲状腺癌の6000例超はチェルノブイリの事故に関連付けられると結論したが、他の癌については事故との関連を示す明確なエビデンスはないと報告している。一方、民間団体のグリーンピースは、事故に起因する過剰な癌罹患者は9万3000例を超えるだろうとの予想を示している。

 日本では福島原発周辺の住民に対する甲状腺被曝のスクリーニングが行われているが、これまでのところ危険なレベルに達している人は見つかっていない。

 なお、原子力事故の心理的負荷は見逃されがちだが、実は国際原子力機関(IAEA)は91年に、チェルノブイリ事故の精神面への影響は生物学的なリスクに比べ非常に大きかったとの結論を公表している。国連のチェルノブイリフォーラムも、事故の最大の影響は住民の精神的健康面に認められ、放射性物質曝露が健康にもたらすリスクに関する情報が適切に提供されなかったことによって被害はさらに深刻になったと述べている。

 福島原発事故の長期的な転帰は明らかではないが、今後数年間、放射線量を監視し、適切な安全策を実施し、住民を支援するためには、正確な情報の広範な提供は必須だ、と著者らは述べている。

 エディトリアルの原題は「Japan's nuclear crisis」、全文が、Lancet誌のWebサイトで閲覧できる。

参考リンク:
チェルノブイリ20年の真実
事故による放射線影響をめぐって
http://www.aesj.or.jp/atomos/popular/kaisetsu200701.pdf

子どもの事件の現場から(106)
発達障害の精神鑑定から司法福祉へ
http://www.aiben.jp/page/library/kaihou/2309_00_kodomo.html魚拓
会報「SOPHIA」 平成23年9月号より

岐阜大学准教授・精神科医
高岡 健

発達障害の過剰診断

日本の司法領域において、自閉症スペクトラム障害(広汎性発達障害)をはじめとする発達障害に関し注目が集まるようになったのは、2000年以降だ。当初は、これらの障害の見落としが問題だった。ところが、わずか10年あまりの間に事態は急転回を示した。自閉症やAD/HD(注意欠如/多動性障害)の過剰診断と言いうるような状況が、生まれはじめたのである。

観護措置の段階で、あるいは送致先の少年院で、単にコミュニケーションが上手でないという理由から、発達歴を十分に確認しないまま発達障害を有すると決めつけられた少なくない数の事例を、私は知っている。その結果、少年が有している精神疾患が見落とされたり、狭義の児童虐待やマルトリートメント(不適切養育)の結果としての言動を、障害のせいだと誤解してしまう事態が生じている。

たとえば、躁うつ病の躁状態による落ち着きのなさを、自閉症スペクトラム障害ないしAD/HDに伴う多動だと誤診された事例がある。また、児童虐待を被って育った少年の示す注意集中の困難を、発達障害に基づく特徴だと誤ってとらえた事例もある。そうなってしまえば、少年の処遇もまた、誤った指針のもとに置かれてしまうことは論を待たない。

情状の等閑視

加えて、もう1つ問題がある。少年が自閉症スペクトラム障害を有している場合でも、障害自体が直接的に非行をもたらすわけでは、もちろんない。にもかかわらず、関係者のまなざしが障害にのみ向けられると、少年をとりまく環境の影響その他の情状が等閑視されがちになる。

同僚たちとともに私は、加害少年が自閉症スペクトラム障害を有していると診断された、いくつかの事件について検討したことがある。そのうちの1つである教職員殺傷事件では、いじめを回避するために不登校を選択した少年に対して、教師や母親は不登校の意義を理解しようする姿勢を欠いていた。

同様に、「理科実験型」などと呼ばれる、毒物による殺人未遂事件でも、いじめの事実に周囲の大人たちは気づいていなかった。また、ある放火事件では、少年への暴力を伴う勉強の強要が、父親によって日常的に繰り返されていた。

このように、自閉症スペクトラム障害を有する少年が惹起した事件であっても、その背景には、いじめや不登校に対する無理解や、教育の名のもとに行われる虐待ないしマルトリートメントが介在しているのである。

しかし、障害以外の重要な背景が等閑視されると、いきおい少年の責任能力の有無にのみ関心が集中し、情状の検討を通じた少年への理解がおろそかになる。すると、少年の更生に向けた道筋は、せいぜい障害特性を訓練によって軽減するといった発想にとどまってしまい、少年の自己尊重感は回復しない。

司法福祉

このような現状を改善するためには、児童精神科医による精神鑑定の実施はもとより、精神鑑定書の内容を含む少年審判で得られた所見を、終局決定後の処遇過程に活用することが重要になる。このことは、発達障害及びその他の要因がどのように絡み合って非行への道筋を形成したのかを明らかにし、その道筋をいかに修整すれば、少年の自己尊重感の回復を通じて更生へと至ることができるかを解明する作業であるから、司法福祉そのものに他ならない。換言するなら、精神鑑定もまた、司法福祉の一翼を担うものとして位置づけることができるのである。
時代の風:放射能トラウマとリスク=精神科医・斎藤環
http://mainichi.jp/select/opinion/jidainokaze/news/20120122ddm002070146000c.html魚拓

 ◇分断招く隣組的な心性

 福島県南相馬市で診療と内部被ばくの検査、健診、除染などにかかわっている東大医科研の坪倉正治医師によれば、現時点で慢性被ばくによる大きな実被害の報告は、ほとんどないとのことである(小松秀樹「放射能トラウマ」医療ガバナンス学会メールマガジンvol・303)。

 むしろ深刻なのは、外部からの批判や報道などによる社会的な影響のほうである。原発事故による最大の被害は、子どもの"放射能トラウマ"だ。しかもその多くは、大人の"放射能トラウマ"による"2次的放射能トラウマ"であり、年齢が低いほどトラウマの程度が強い印象があるという。

 風評被害の影響もあって、うつ状態になる人が増えたり、家族が崩壊したりという事態は耳にしていた。現地で子どもの電話相談窓口を担当している人からは、このところ虐待相談も急増しているという話も聞いた。

 被災地での虐待件数についてはまだ正確な統計データが得られていないが、屋外で遊ぶ機会の減った子どもたちが、精神的に不安定な大人と過ごす時間が増えたとすれば、まったくありえない話ではない。

 問題は「風評」ばかりではない。福島の地で生活を続けている人々を批判する声が、いまだにある。とにかく「放射能というだけで危険」とする立場からは、汚染された地域に住んで子育てをするなど考えられない、というわけだ。

 しかしこの考え方は、自らが住む場所の安全性が相対的なものでしかない事実を十分に認識しておらず、いわば「福島産の放射能が危険」といった「ケガレ」の発想に近い立場という意味で"放射能幻想"と呼ばれても仕方がない。

 放射能はさしあたり人の身体は破壊していないが、"放射能幻想"は人の心を確実に破壊しているということ。

 その背景には、低線量被ばくの危険性がはっきりしないという問題がある。放射性物質の放出が及ぼす長期的影響については、不確実な点が多いのだ。生活環境に数世代にわたって残留するごく低レベルの放射能が、住民集団の健康に、長期的にどのような影響を及ぼすのか。「これ以下は安全」という「しきい値」はあるのか。被ばく線量と発がん率の上昇には直線的な関係があるのか。確実なことは何も分かっていない。

 この状況下で立場は二つに分断される。「危険であるという根拠がないのでさしあたり安全」とする立場と、「安全であるという根拠がないので危険」とする立場。事故直後には後者に傾いた私自身も、最近では前者に近い立場だ。不確実な未来予測に基づいて当事者を批判する権利は私にはないと気づいたからだ。

 社会学者のウルリッヒ・ベックは、福島の原発事故に関する論考で「非知のパラドクス」について述べている(「リスク化する日本社会」岩波書店)。

 先にも述べたとおり、低線量被ばくによる影響については、確実なことはほとんど分かっていない。こうした「非知」に耐えられない人々の中には都市伝説や代替医療に向かうものも出てくるだろう。さらにここに政治的な問題が加味されることで、知識はさらに硬直化する。

 例えばチェルノブイリの犠牲者数については、数十人から百万人以上とする説まで、報告によってまちまちであるという。事故の範囲をどう定義するかによって、データの解釈がまったく異なってくるのだ。汚染地域の区分にしても、しばしば曖昧で時に矛盾することすらあった。

 この状況下では「危険が増すほどに非知も増し、決断は不可避となるとともに不可能となる」。それどころか現時点では、情報が増えれば増えるほど混乱が深まるようにすら思われる。分かれば分かるほど分からなくなる、という状況下で、もはや「絶対の安全」は誰の手にも入らない。

 まさにこれこそが、ベックが「リスク社会」という言葉を通じて述べた状況ではなかったか。リスク社会においては、われわれの生活を快適にするはずの技術が同時にリスクも生産してしまうため、ひとたび事故が起こればリスクは万人に等しくふりかかることになる。原発事故がそうであったように。

 ベックは「リスクによる連帯」を提唱するが、いま起きつつあることはむしろ「リスクによる分断」ではないだろうか。この分断の要因としては、リスクそのものを生産している政府や東京電力以上に、リスクへの態度が異なる人々への攻撃性のほうが先鋭化してしまうという、いわば「隣組」的な心性があるように思われる。しかし、その「分断」が誰を利することになるかは言うまでもないだろう。

 さらに付け加えるなら「連帯」の手前で問われるのは、私たちの「死生観」そのものなのではないか。私たちの生が常に多様な、時として定量することもできないリスク--それは「放射能」に限らない--を抱えていること。つまり生の内側では常に死が育まれている事実を理解すること。被ばくについて考えることは、この事実を深く認識するまたとない機会となるだろう。


「偽物」と分かっていても、治療に効果発揮する偽薬
http://jp.wsj.com/Life-Style/node_369992

 「パラセボ(偽薬)効果」と聞くと、その偽薬が効くと信じるが故に得られる気分的な高まりを思い浮かべることが多い。だが、最近の研究では、つかの間の気分の高まり以上のものがパラセボから得られることが分かってきた。

 最近の研究で、自身の体や健康状態に関するある種の見方や思い込みが、病状の改善につながり、食欲や脳化学物質や視力の変化にまでつながる可能性があることが示され、心と体が深く結びついていることが浮き彫りになった。

 この場合、摂取するのがパラセボであり、「本当の」治療ではないと分かっていても関係がないようだ。ある研究では、有効成分を含まない砂糖の薬を飲むと告げられた被験者にも、強いパラセボ効果が見られた。

 パラセボは実際の臨床診療でも使われる場合がある。英国の医学会報で発表された2008年の調査では、700人近い内科医とリウマチ専門医にアンケートを行い、その約半分がパラセボを定期的に処方すると答えた。最もよく使われるパラセボは市販の痛み止めとビタミン剤だ。砂糖でできた薬や食塩注射を使うと答えた医師はわずかだった。米国医師会によると、扱いにくい患者をなだめるためだけにパラセボを処方することはできず、患者に通知して同意を得なければ使うことはできない。

 研究者はパラセボ効果をさらに探求し、効果を増減させる方法を解明したいとしている。体重やメタボリズムに関係する健康状態を改善するうえでは、より強力で長続きするパラセボ効果があれば有用かもしれない。

 エール大学院生のアリア・クラム氏とハーバード大学のエレン・ランガー心理学教授が行い、2007年にサイコロジカル・サイエンス誌に掲載された研究によると、ホテルの客室係は、仕事がよい運動になると聞かされると、4週間後には体重や血圧、体脂肪が大きく減少した。同じ仕事をしながらも、運動については聞かされなかった従業員では体重に変化はなかった。両グループとも食事や運動量は変わっていなかった。

 昨年、ヘルス・サイコロジー誌に発表された別の研究では、個人の食欲やグレリンと呼ばれる消化管ペプチドの生成に対して、人の物の見方がどのように影響するかが示された。グレリンは食後に得る満足感に関係しており、体が食べ物を必要している時には上昇し、カロリーが摂取されると減少して、もう空腹ではなく、食べ物を探す必要はないと体に伝える。

 しかし調査では、グレリンのレベルは、実際にどれだけのカロリーを摂取したかではなく、どれだけ摂取したと告げられるかに左右されることが示された。これから飲もうとするミルクセーキが620キロカロリーで「過剰」であると告げられた被験者は、脳が満足感を認識し、同じミルクセーキが120キロカロリーで「適度」なものであると言われた被験者よりも、グレリンのレベルが低下した。

 クラム氏によると、この結果は、ダイエット食品を食べるとなぜ満足感が得られないのかを、心理学的に説明するという。「ダイエット食品を食べる場合、体に対して十分には食べないと伝えることになる」

 うつ病や片頭痛、パーキンソン病などに関する研究では、砂糖でできた薬や偽手術、偽はり治療といった効力のないとされている処置でも、大きな効果をもたらすことが発見されている。サイエンス誌に2001年に発表された研究では、パーキンソン病の症状を改善するうえで、パラセボが本当の治療と同等の効果を発揮することが示された。パラセボは実際に、パーキンソン病の治療に有効とされている神経伝達物質のドーパミンを大量に誘発した。

 ハーバード大学のパラセボ研究プログラムのディレクターであるテッド・カプチュク氏らは、パラセボが効果を発揮するためには、必ずしも患者をだます必要はないことを示した。同氏らは、過敏性大腸症候群の患者80人に対して、パラセボを与えるか、何の治療も施さなかった。パラセボを与えられたグループは、薬が効力のない物質で作られ、「心身の自己回復プロセス」を通じて症状が改善するという研究結果があることを示された。患者は、パラセボの効果を信じる必要はないが、ともかく薬を飲むように言われた。3週間が経過した後、パラセボを摂取した患者は苦痛が軽減し、一部の症状が大きく改善、生活の質がいくぶん向上したと報告した。

 なぜパラセボは、真の治療ではないと知らされた後でも効果を発揮するのか。カプチュク氏は、期待感がその一因だと言う。また、前向きな環境に置かれ、革新的なアプローチと薬を飲むという日々の儀式が、変化に対して開かれた心を作り出すのではないかという。

 カプチュク氏は「現在のところ、パラセボは病気の生態を根本から変えるのではなく、患者が病気を経験し反応する方法を変えるのではないかと考えている」と話している。

記者: Shirley S. Wang
Global Status Report on Alcohol and Health 2011
http://www.who.int/substance_abuse/publications/global_alcohol_report/en/index.html
The Global status report on alcohol and health (2011) presents a comprehensive perspective on the global, regional and country consumption of alcohol, patterns of drinking, health consequences and policy responses in Member States. It represents a continuing effort by the World Health Organization (WHO) to support Member States in collecting information in order to assist them in their efforts to reduce the harmful use of alcohol, and its health and social consequences. The report was launched in Geneva on Friday 11 Februray 2011 during the first meeting of the WHO global counterparts for implementation of the global strategy to reduce the harmful use of alcohol.
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「ノンアルコール」の表示に関する緊急要望書
http://www.ask.or.jp/ask120110.pdf

【ノンアルコールについて】
1)ノンアルコールの定義の規定
2)既存のアルコール飲料と同一ブランド(商品名・ロゴ・デザインイメージ)及び類似する意匠を使わないこと
3)ノンアルコールであることが一目でわかる統一表示の規定
4)未成年者を誘引しないよりいっそうの工夫
(20 歳以上が対象であるとの表示、広告に未成年に見える若者や未成年に人気のタ
レントを起用しない、アルコールの棚での販売、レジでの年齢確認など)
5)健康上の理由で禁酒・断酒している人、妊産婦に向けた広告やキャンペーン、サンプリングをしないこと

【酒類について】
1)缶入りの酒類については、「お酒マーク」に加え、缶のプルトップの色を変えるなどノンアルコールとの識別性を高めること
2)今後、酒類の商品名に、「ゼロ」「オフ」「フリー」を使わないこと
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断酒に貢献 全国大会表彰 朝日の高橋好道さん
http://www.map-color.co.jp/times_news/archives/8142.html
 2011.11.13 (日)
 NPO法人長野県断酒連合会の前理事長で、アルプス断酒会の名誉会長・高橋好道さん(81)=朝日村西洗馬=がこのほど、第59回精神保健福祉全国大会で日本精神保健福祉連盟会長表彰を受けた。地域の断酒会の中心となって、長年尽力してきた功績が認められた。高橋さんは受賞の喜びをかみしめ、支えてくれた関係者に感謝の思いを新たにしている。

様々お世話になっている断酒会の会長さんが、表彰されたという地元紙の記事です。2年前、全国大会開催のために積み立てた金を県断連の会計担当理事が使い込んでしまうという事件があり、その事後処理は端から見ていてもなかなか大変だったようです。AAにも奥様と二人でお招きし、酒害体験を話していただきました。
「トラウマを消す薬」を米軍が研究

兵士たちのPTSD(心的外傷後ストレス障害)問題を抱える米国防総省が、「恐怖の消去」に役立つとされる、D-サイクロセリン(DCS)を使った曝露療法の研究に支援を開始した。

http://wired.jp/2011/12/21/%e3%80%8c%e3%83%88%e3%83%a9%e3%82%a6%e3%83%9e%e3%82%92%e6%b6%88%e3%81%99%e8%96%ac%e3%80%8d%e3%82%92%e7%b1%b3%e8%bb%8d%e3%81%8c%e7%a0%94%e7%a9%b6/魚拓

PTSD(心的外傷後ストレス障害)に苦しむ兵士は少なくとも250,000人にのぼるが、これまでのところ、国防総省が試してきた治療法はどれもうまくいっていない。抗鬱薬や行動療法といった従来型のアプローチは、大失敗に終わっている。

国防総省の助成金によりハーバード大学で大々的に行われたプロプラノロールに関する一連の研究(日本語版記事)をはじめとする、「恐怖を除去する」とされる薬をテストするこれまでの調査も、すべてが期待に反する結果に終わっている。

こうしたなか、米国防総省は12月13日(米国時間)、軍が実施するPTSD研究に関して、長期にわたって中核となる3つの研究機関に対する合計1,100万ドルの補助金を発表した。ニューヨーク長老派教会病院ワイル・コーネル・メディカル・センター、南カリフォルニア大学、およびエモリー大学において、D-サイクロセリン(DCS)の有効性に関する研究を専門家が行うことになる。

DCSは、恐怖記憶の消去を促進するとされている薬だ。たいてい、曝露療法(疑似体験療法)の直前に、このDCSを服用する。

曝露療法とは、心的外傷(トラウマ)による恐怖の連想を無効化するために、安全な環境でトラウマ的体験を再び体験するものだ。心は、過去の出来事を思い出すたびに、その記憶を「上書きする」。曝露療法によって、患者が心的外傷の記憶をより恐ろしくないものに書き直す方向に持っていくことで、悪夢やフラッシュバックなどの症状を著しく改善できることが複数の研究で示唆されている。

曝露療法の際に用いられるDCSは、恐怖反応の統制に関与している脳の経路に働きかけ、書き直しを促進すると考えられている。DCSにより、脳が学習するプロセスが強化されるようだ。DCSはまた、恐怖反応を司る脳の領域である小脳扁桃にあるレセプターと結合する。そのため、患者がトラウマ体験を再体験している「あいだに」恐怖反応をブロックすることで、DCSは恐怖を出どころから、文字どおり「消去」できると専門家は考えている。

DCS自体は1960年代から存在しており、最初は結核の治療に使われた[抗生物質の一種]。しかし現在は、抑鬱症、統合失調症、強迫性障害、そしてPTSDなどの症状を緩和して、錠剤の常用をせずにすませられるという可能性のほうに、研究者は関心を向けている。

エモリー大学の研究チームは、PTSD、高所恐怖症、および強迫性障害の患者に、DCSとバーチャル・リアリティーの利用をすでに試みている。バーバラ・ロスバウムらの同大学の研究チームは2006年以降、患者にDCS、ザナックス[抗不安薬]、また偽薬を用いて、曝露療法の比較実験を行っている。

一方で、DCSに関する人体研究には、望みが持てない結果が出ているものもある。2010年には、国際トラウマティック・ストレス学会(ISTSS)の大会で、DCSを使った期待はずれの試験が数件、発表されている。

{この翻訳は抄訳です}
TEXT BY Katie Drummond
TRANSLATION BY ガリレオ -緒方 亮

WIRED NEWS 原文(English)
http://www.wired.com/dangerroom/2011/12/fear-erasing-drugs/魚拓
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Twelve Tips on Keeping Your Holiday Season Sober and Joyous!
(クリックすると拡大)

大阪の仲間が日本語訳を作って送って下さいました。元はNY GSOのBOX459からダウンロードできるそうです。
臨床心理士・信田さよ子「あなたの悩みにおこたえしましょう」
ハマってしまう自分をどうすればいいのでしょう
https://aspara.asahi.com/column/nayami-okotae/entry/BMHl6vDJQy

Q ハマってしまう自分をどうすればいいのでしょう ミエ、35歳

 思春期のころから摂食障害になり、約8年間過食と嘔吐を繰り返す生活を送りました。親には知られたくないと思い隠れて吐いていましたし、それほどひどく体重が減ったわけでもなかったので、幸い今でも家族はそのことを知らないままです。

 就職して実家を離れ、食事の習慣を規則正しくするよう努力したことが功を奏したのか、25歳ごろには症状はなくなりました。ところがそのころから別の悩みが生まれました。ヨガを始めると休みの日までヨガ教室に通いつめ最後には腰を痛めてしまい、手芸の刺繍を始めると睡眠時間を削ってまで根を詰め、最後には部屋中に作品が溢れるほどになりました。やり始めると自分でも止められないほど夢中になってしまい最後は行き詰まってやめるということの連続なのです。35歳になった今そんな自分に気づき、つくづくいやになりました。新しいことを始めようと思うのですが、ついつい躊躇してしまいます。

 最近の私は仕事から帰ってからの時間をひとりでワインを飲んで過ごすようになりました。実は、父親はアルコール依存症といっていいほどの酒飲みです。しょっちゅう酔って母に暴力をふるい、私も何度かひどく殴られた記憶があります。父は70歳を目前にしながら、今でも実家で毎晩のように酒を飲み母を困らせています。そんな家族だったので、幼いころから父のような男性とは結婚しないと誓い、成人してからは飲酒するにもかなり用心深くしてきました。きっとのめり込んでしまうと思うので、ゲームやギャンブルにも近寄らないようにしてきました。

 そんな努力をしてきたにもかかわらず、いつのまにかワインを飲む時間が増えた私が不安なのです。いつか父のようになってしまうのではないでしょうか。何事にものめり込む性格は世代間連鎖するのでしょうか。

 振り返ってみれば、人間関係も熱中しては離れることを繰り返してきたような気がします。お付き合いする男性との関係も長続きしません。早く結婚して、両親とは違う幸せな家庭を築きたいのです。こんな私をなんとか変える方法はあるのでしょうか。アドバイスをお願いします。

A 心理学用語が用いられるとき

 ご質問の内容ですが、読む人が読めばどこが問題なのだろうと訝しんでしまうでしょう。かつて摂食障害だったが今では症状はなくなっている、仕事はちゃんと続けている、趣味もやり始めれば一定程度の道は極める......。これらはほめられこそすれ、何か問題があるわけではないでしょう。なのにミエさんはそこに大きな問題を感じていらっしゃる。

 その根底にあるのはアルコール依存症である父への嫌悪と、その娘であるがゆえにいつか自分も父に似てしまうのではないかという恐怖なのではないでしょうか。自分が親のようになってしまうという世代間連鎖をミエさんは何より怖れていらっしゃるのです。では、果たして世代間連鎖は起きるのでしょうか。まずこの言葉について簡単に説明しておきましょう。

 心理学用語が人々に取り入れられるのは相応の理由があります。そのいい例が性格という言葉です。今や日常用語になったこの言葉は戦後社会において急速に広がったものです。民主主義社会においては、人々は生まれつきの家柄や性別によって決定されるのではなく、平等な人権に基づいて生きることができるようになりました。たとえ建前であったとしてもそのことが憲法に謳われてから、性格という言葉が流通し始めたのです。もともとの性質(たち)や性根、人品とも異なる性格という心理学的な言葉は、個人を尊重し、その結果として個人の責任に帰せられる言葉でした。親がしつけや育児に際して「あの子の性格は~」と語るとき、子どもには性格という目に見えない実体が備わっており、そこに問題があるのだと主張しているのです。子どもの性格は子どものものなのですから、親に責任はなくなります。また対人関係において、「あの人はヘンだ」という代わりに「あの人は性格がヘンだ」と批判されれば、ヘンな性格を修正する責任が強調され、却って傷ついてしまうでしょう。

 このようにして心理学用語は、その都度日本の社会に必要とされて定着してきました。最近では「トラウマ」「自己評価が高い(低い)」などが挙げられます。世代間連鎖もそのひとつと考えていいでしょう。逆にそれらから日本の社会の変貌を見ることができるかもしれません。

「世代間連鎖」という言葉が隠ぺいしたもの

 この言葉が日本で広範に受け入れられるようになったのは、1990年代に入ってからでしょう。私の記憶によれば、もともとはアルコール依存症の親をもつ人たちが、成人後、親と同じくアルコール依存症になってしまうという多くの事実から生まれた用語です。私も分担して翻訳している『私は親のようにならない―嗜癖問題とその子どもたちへの影響』(クラウディア・ブラック著、斎藤学監訳、誠信書房、1989)は世代間連鎖の問題を描いた最初の本でした。著者によれば、アメリカではアルコール依存症者の子どもは成人後約半数が同じ依存症に、四分の一の配偶者が依存症者になるというのです。あまりに希望がないと思われるかもしれませんが、この本はそうならないための手立ても書かれています。しかしながら、日本において広がったのは、アルコール依存症のもたらす次世代への影響より、「親のようになってしまう」という悲観的な側面だったのです。それがもっとも活用されたのが子どもへの虐待でした。

 90年のバブル崩壊後、日本経済は成長を鈍化させ長期にわたる低迷状態へと突入していきます。同じ時期、日本では子どもの虐待防止が叫ばれ始めました。大阪と東京で、親の虐待から子どもを守るための市民団体が、小児科医や弁護士・精神科医・保健師などを中心として相次いで設立され活動を開始します。マスメディアでも虐待死のニュースが流れ始め、特集も組まれました。それらの論調の多くは虐待する母を克明にルポし、彼女たちも虐待されて育った、つまり世代間連鎖によるものだと結論づけました。言うなれば、「母性」を喪失し虐待に走る母を俎上に上げ、その理由として彼女たちも虐待されて育ったという因果論によって説明づけたのです。多くの読者は虐待という残虐な行為に戸惑うからこそ、このようなわかりやすい説明を受け入れたのです。これが世代間連鎖という言葉が一気に広まるきっかけとなりました。

 虐待を母=女性の問題に矮小化し、さらに世代間連鎖という因果論で説明することで隠ぺいされたものは何だったのでしょう。

 2000年に子どもの虐待防止法が施行されて以来、さまざまな調査によって明らかになってきたことがあります。それは虐待の加害者の多くは実父・義父であることでした。また虐待されて育った女性が必ずしも虐待する母になるわけではないことも明らかになっています。つまり90年代に世間一般に受け入れられたあの世代間連鎖という言葉はそれほど根拠がなかったのです。

 とすれば、当時の社会において虐待を女性=母の問題へと囲い込み、「自己責任」の対極である運命論的な世代間連鎖と結論づけたことは、不況のさなかで子どもを虐待する男性=父の姿を隠ぺいし、さらにすべてを自己責任へと集約する新自由主義(ネオリベラリズム)からの解放を意味したのではないでしょうか。おまけに、母=女性は虐待されて育った被害者性を承認されることで自分を責めずに済み、父=男性の責任も不問に付されたのです。

世代間連鎖は男性の問題

 近年新たに注目されるようになったのは、DV(ドメスティック・バイオレンス)を目撃して育った男児が、長じて父と同じく配偶者に暴力をふるうようになるという世代間連鎖です。DVを目撃することは広義の虐待であり、その影響は男児と女児ではジェンダー差があると言われています。少々雑駁な説明になりますが、父から母への暴力を見た男児は攻撃性を他者に向け、女児は自分に向ける傾向があると言われます。

 私はDV加害者プログラムを実施していますが、そこに参加する男性たちの多くは子ども時代に父から母へのDVを目撃しているという事実も、それを裏付けるように思います。したがって世代間連鎖は女性(母から娘へ)の問題ではなく、むしろ男性(父から息子へ)の問題だと言ってもいいでしょう。女性は否が応でも出産を経験することで母親のことを思い出さざるを得ませんが、男性も結婚する前に今一度父親のことを思い出し、母にとって父がどのような夫だったかを振り返ってもらいたいのです。それは決して後ろ向きなことではなく、夫となり父となるために不可欠な作業であるとさえ思います。自分が深く父の影響を受けていることを知るのは、その影響を払拭するための大前提なのです。

コントロールを喪失する=依存症

 さて肝心のアルコール依存症についてですが、アルコールという薬物に対する反応における遺伝的要素は否定できないようです。アルコールの酔いが何らかのメリットをもたらさなければアルコール依存症にはなりません。父親がアルコール依存症であるということは、アルコールを摂取することでミエさんも「酔いの快楽」を経験できる可能性が大きいということを表しています。そのことが直線的にアルコール依存症につながるわけではありませんが、人生においてつらい時期にアルコールの酔いだけが救いになることもあるでしょう。依存症になる危険性はそこに潜んでいます。

 ミエさんはワインを飲む時間が増えているとお書きになっていますが、それが楽しみであれば問題ないのですが、飲むことに罪悪感を感じながらそれでも飲んでしまうのであれば、少々問題だと言わざるをえません。さまざまなことにのめり込みハマってしまうのは、いつのまにかコントロールを喪失していることを表しています。自分でも止められないことをコントロール喪失といいますが、実は過剰なセルフコントロールとそれの喪失とはコインの裏と表の関係にあります。なすがまま、やりたいようにしている人はコントロールを喪失しているわけではありません。むしろ自分を責めて止めようとすればするほど止まらなくなり、コントロールを喪失していくのです。依存症になる人は、裏返せば自分を責めている人なのです。父親のアルコール依存症が飲むことへの罪悪感につながっているとすれば、ミエさんは依存症になる危険性が高いことになります。

予防できる世代間連鎖

 危険性が高いことはやめましょう。ワインを飲むことは今なら簡単にやめることができます。もう少し時間が経つとミエさんのアルコールへの依存度は強くなるでしょう。そうなればやめるのはどんどん困難になります。この段階で相談してみようと思われたのは適切な判断でした。

 さて冒頭でも申し上げましたが、ミエさんはこれまでの人生をもう少し評価してもいいのではないでしょうか。家族に内密にしたままで摂食障害から回復されたことは、何より評価されるべきでしょう。多くの摂食障害者は10年以上も症状に苦しみ、周囲の家族を巻き込んでいきます。それに比べればなんと健気なことでしょう。父のDVとアルコール依存症に苦しんでいる母親に苦労をかけたくないという思いからか、それとも自分の苦しみを親が理解できるはずもないという絶望からか、いずれにしてもその孤高の姿はミエさんのプライドそのものを表しています。そのプライドこそが、ミエさんのこれまでの人生を守り支えてきたということを信じていただきたいのです。用心深くギャンブルやゲームを遠ざけ、人間関係においても決定的に傷つくことを避けてきたこと。これらも同じプライドの表れとして位置づけることができるでしょう。

 そんなミエさんに提案があります。プライドは自分を守りますが、時には他者を遠ざけることもあります。そこから生まれる孤独感と孤立感は、実はアルコールの酔いと親和性が高いのです。ワインをやめたついでに、同じ経験をもつ人たちのグループにつながり、参加してみませんか。アルコール依存症や機能不全家族で育った人たちの自助グループやカウンセリング機関で実施されるグループもあります。ミエさんのように深い孤立を経験した人だからこそ味わえる、他者とつながる喜びがあるでしょう。そうすることで世代間連鎖という言葉に怯える必要はなくなり、幸せな家庭を築く可能性も出てくるのではないでしょうか。


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註1:2004年に改訂版刊行
 2:特定非営利活動法人児童虐待防止協会(APCA)1990設立
 3:社会福祉法人子どもの虐待防止センター(CCAP)1991設立
 4:ACA(Adult Children Anonymous、アダルト・チルドレン・アノニマス)http://aca-japan.org/

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薬物依存症者処遇プログラム研修
第9回薬物依存者回復支援セミナー
DARS in Kawasaki 2012

「境界を越えて~薬物問題における福祉・医療・司法~」

1/21(土)川崎市国際交流センター
第1部 13:00~14:50
・挨拶と趣旨説明 龍谷大学 石塚伸一
・依存症・自尊心が高ければ回復できるのか?
  日本ダルク 近藤恒夫
・薬物依存症者の家族のための法律知識
  アパリ 尾田真言
~休憩30分
第2部 15:20~17:20
・ミニシンポジウム 「刑の一部執行猶予を考える」
 コーディネーター:石塚伸一
 シンポジスト:市川岳仁(三重ダルク)・尾田真言(アパリ)
   加藤武士(京都ダルク)・相良聡(川崎ダルク)

1/22(日)川崎市産業振興会館
第1部 9:30~12:35
・前日のまとめ 龍谷大学 石塚伸一
・多重構造の「ザル」を目指して
 ~治療プログラムを介したつながり~
  国立精神・神経医療研究センター 松本俊彦
・地域での薬物依存者の回復にどう関わるか
  東海大学 宮永耕
~休憩10分~
・個の自立に課題を抱えるメンバーの回復と支援について
 ~重複障害の視点から~
  三重ダルク 市川岳仁
・異なる主体を共有される課題で横につなぐ
  龍谷大学 土山希美望
~休憩60分~
第2部 13:35~16:30
 ミーティング 沖縄ダルク 三浦陽二
 わかちあい

申込み〆切 2012年1月13日(金)必着

NPO法人アパリ
http://www.apari.jp/npo
龍谷大学矯正・保護総合センター
http://rcrc.ryukoku.ac.jp/index.php

お問い合わせ、お申し込み先
 龍谷大学矯正・保護総合センター FAX 075-645-2632
  〒612-8577 京都府伏見区深草塚本町67 TEL 075-645-2040

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2012年1月度(第234回)アルコール問題を考える集い

日時 1月22日(日)午後1時30分~4時15分
場所 東村山ふるさと歴史館(東村山市諏訪町1-6-3)視聴覚室
体験発表 回復を目指す仲間
講演テーマ 一般内科医のアルコール関連問題への取り組み
 講師 高山市国民健康保険丹生川診療所 所長 土川権三郎 先生

〈交通アクセス〉
西武新宿線・西武国分寺線「東村山駅」西口より徒歩で10~15分

主催 NPO法人アルコール問題と取り組む組織
仲間と共に歩む会 連絡所
 〒203-0052 東京都東久留米市幸町 1-5-32
 TEL・FAX 042-479-4533
共同作業所 久留米の家
 〒203-0052 東久留米市幸町 4-11-21
 TEL・FAX 042-477-3556
第9回とちぎアディクションフォーラム
アディクションとリカバリー ~地域社会と回復の共存~

日時:1月21日(土)10:00~16:30(開場 9:30)
会場:とちぎ青少年センターアミークス
参加費:500円

 9:30 開場
10:00 主催者挨拶
10:10 講演:上岡陽江さん
12:00 昼食(各自ご準備下さい)
13:00 仲間の話
   ヒロ:薬物依存/カズ:アルコール依存
   ゆみこ:ギャンブル依存家族
14:20 休憩
14:30 仲間の話
   きょうこ:とちぎAKK研究会
   ナベ:GA宇都宮/リュウドウ:薬物依存
15:30 分かち合い
16:30 閉会

主催:とちぎアディクションフォーラム実行委員会
共催:栃木DARC
協力団体:とちぎセルフヘルプ情報支援センター

上岡陽江プロフィール:
ダルク女性ハウス代表。精神保健福祉士。自身の薬物・アルコール依存症や摂食障害の体験から、女性の薬物依存症回復施設を立ち上げた。最新の当事者研究をもとに、依存症の女性の回復、依存症の親をもつ子どものプログラムづくりにも力をそそいでいる。著書に「虐待という迷宮」(共著:信田さよ子 シャナ・キャンベル)、「その後の不自由」(共著:大嶋栄子)など
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平成23年度薬物フォーラム
2012年1月29日(日)
三重県人権センター(津市一身田大小曾693-1)多目的ホール

10:00~12:30 シンポジウム(入場無料)
 「依存症と発達障がい」~ギャンブル依存の視点から~
 シンポジスト:
  中村努(NPO法人ワンデーポート施設長)
  稲村厚(NPO法人ワンデーポート理事長、稲村司法書士事務所)
 コーディネーター:
  市川岳仁(三重ダルク施設長)

13:30~16:30 三重DARCフォーラム(入場料1,000円)
 「薬をやめてもうまくいかない!?」
 研究報告会 重複障がいを持つ仲間の地域移行を考える
 "東紀州プロジェクト"
ファイザー製薬より助成を受け、重複障がいを持つ薬物依存症者の地域移行・就労支援に関する研究を行ってきました。その成果報告会を行います。
 1. 断薬後に残る課題と新たな回復概念の獲得...市川岳仁
 2. 地域から見た東紀州プロジェクト
   ~東紀州の現状と地域で働くこと、そして今後の展開について...大川真清
 3. 発達障がいの傾向を持つダルク利用者の一次産業へのマッチングと具体的支援...中村恵太
 4. 重複障がいがある時の働きやすさと働きにくさを考える...プロジェクト研究員
 5. 座談会

問い合わせ先:特定非営利活動法人 三重ダルク
 Tel/Fax: 059-222-7510
 http://miedarc.com/

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PROHIBITION(禁酒法)

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PROHIBITION
http://www.pbs.org/kenburns/prohibition/

PROHIBITION is a three-part, five-and-a-half-hour documentary film series directed by Ken Burns and Lynn Novick that tells the story of the rise, rule, and fall of the Eighteenth Amendment to the U.S. Constitution and the entire era it encompassed.

Prohibition was intended to improve, even to ennoble, the lives of all Americans, to protect individuals, families, and society at large from the devastating effects of alcohol abuse. But the enshrining of a faith-driven moral code in the Constitution paradoxically caused millions of Americans to rethink their definition of morality.
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