漫筆 (1)

休みの日に気持ちよく朝寝をしていると、珍客が来る。
私は起こされて気分が悪い。
玄関先の来客が来意を告げる。
「アフリカの子供たちのために井戸を掘っています」
あるいは、
「カンボジアの子供たちのために義足を送っています」
なるほど、それは善いことをしていますね。
「もしご協力いただけるなら、このハンカチを千円で買ってください」
とても千円するハンカチには見えない。
それでも私は奥へ下がって財布を持ってくる。
相手の目の中に期待が宿るのが見えるようだ。
私はおもむろに財布から100円玉をひとつ取り出すと、相手に差し出す。
「100円募金してあげよう」
相手はあわてて否定する。
「いえ、そうではなくて、ハンカチを買ってほしいのですが」
私は首を振る。
「ハンカチは要らない。が、善意の活動に敬意を表して100円あげよう、受け取りたまえ」
そうするとたいてい相手は能面のような顔になり、
口の中でもごもご言いながら去っていく。
100円玉を受け取る人もいれば、受け取らない人もいる。
10円玉のときもある。
一部始終を聞いていた妻が「あなたってホントに意地悪よね」と言う。
私は起こされて気分が悪いのである。
最近来なくなった。ああいうのは流行らなくなったのだろうか。

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