こころを救う:向精神薬で自殺未遂、診療所は... 人、設備足りず拒否も

こころを救う:向精神薬で自殺未遂、診療所は... 人、設備足りず拒否も
http://mainichi.jp/select/wadai/kokoro/archive/news/2010/07/20100724ddm041040102000c.html魚拓

 医療機関で処方された向精神薬を飲んで自殺を図る人が増えている問題で、過量服薬の恐れがある患者への対応は、診療所ごとに大きく異なる。診察を断る診療所がある一方、受け入れても有効な手立てを打ち出せずにいるところは少なくない。患者をどう支えるか。両方の診療所を訪ねた。【堀智行、奥山智己】
 ◇しわ寄せが他の患者に 採算ギリギリまで診察

 「自殺未遂などの問題行動には対応できません」。静岡県の精神科診療所の院長がホームページにこう掲げ開業したのは2年前だ。

 精神科医歴20年。勤務医時代、昼夜問わず患者が担ぎ込まれる救急の仕事はきつかったが、命を預かるやりがいも感じた。だが自殺を図る患者を救っても感謝されず、逆に助けたことを責められた経験もある。「トラブルメーカー。自ら命を絶とうとした人を他の患者と同じように助ける気にはならない」

 今の診療所は看護師もいない。過量服薬する患者を受け入れれば時間も手間もかかる。そのしわ寄せは他の患者へ向かう。「未遂者を誰が責任を持って診るのかという仕組みがない。行政が作るべきだ。私は他の患者をあふれさせてまで、診る気はない」と言う。

   ◇  ◇

 「せんせえ、お薬飲んじゃった」。6月下旬、川崎市の精神科診療所に30代の女性患者から電話がかかった。同僚や夫との関係に悩むたび、過量服薬を繰り返してきた。今回も向精神薬50錠を飲んだという。通院を始めて2年、手を尽くしてきたが過量服薬は止まらない。院長(49)はすぐ救急病院の受診を勧めた。

 都内の精神科病院の勤務医を経て3年前に開業した。1日の患者は約60人。診察時間は長くて40分。患者の訴えを聴き、経営も成り立つぎりぎりのラインだ。自殺未遂後には1時間かけ、話に耳を傾けることもある。再発を防ぐには薬の管理など周囲の協力が欠かせないが、単身者の多い都会では支援者を探すのも容易ではない。薬を出さなければ転院してしまうかもしれない。「『もう診られません』と言うのは簡単だが、断れば他の医師に押し付けることになる」。ジレンマが募る。

 人も設備も足りない診療所で患者をどう支えるか、試行錯誤が続く。7月上旬、30代の女性が再び過量服薬したと連絡があった。
こころを救う:向精神薬で自殺未遂、診療所は... 松本俊彦氏の話
http://mainichi.jp/select/wadai/kokoro/archive/news/2010/07/20100724ddm041040105000c.html 魚拓

 ◇医師支える体制を--国立精神・神経医療研究センターの松本俊彦自殺予防総合対策副センター長の話

 過量服薬を繰り返す患者に熱心にかかわっても経営的にはマイナスだ。治療をサポートする臨床心理士などを雇えば、人件費捻出(ねんしゅつ)のため、さらに短い時間で多数の患者をさばかなければならなくなる。熱心な精神科医には燃え尽きる人も少なくない。自殺リスクの高い患者と精力的に向き合う医師を支える体制を整える必要がある。

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