やさしい医学リポート:「飲酒」はがんリスクを押し上げる

やさしい医学リポート:「飲酒」はがんリスクを押し上げる
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坪野吉孝 《山形さくら町病院精神科・早稲田大学大学院客員教授》

世界保健機関(WHO)のがん研究機関は、アルコールが口腔、咽頭、喉頭、食道、肝臓、大腸、女性乳房のそれぞれのがんの原因になると判定している。

アルコールががんの原因としてどのくらいの割合を占めているかを推計した論文が、英国医学雑誌に4月公表された。

欧州8カ国(フランス、イタリア、スペイン、英国、オランダ、ギリシア、ドイツ、デンマーク)の追跡調査に参加する主に37~70歳の男女363,988人を対象に分析した。

飲酒の状況を質問票でたずね、最近1年間に飲酒していた者を「現在飲酒者」、以前は飲酒していたが最近1年間は止めた者を「過去飲酒者」、以前も最近1年間も飲酒していなかった者を「非飲酒者」と分類した。

男性では、現在飲酒者が88.2%、過去飲酒者が6.2%、非飲酒者が5.6%だった。女性では、それぞれ79.3%、9.0%、11.7%だった。現在飲酒者の割合は、デンマークとドイツで高く、ギリシアとスペインで低かった。

平均8.8年間の追跡調査に基づいて分析したところ、非飲酒者と比べて、過去飲酒者の全がん発症リスクは男性が1.54倍、女性が1.10倍だった。現在飲酒者の全がん発症リスクは、1日のアルコール摂取量が12グラム(日本酒で約半合)増えるごとに、男女とも3%ずつ高くなった。

これらの結果をもとに推計すると、アルコール(現在飲酒と過去飲酒)ががんの発症に占める割合は、全がんでは男性で10%、女性で3%だった。つまり、アルコールが、男性の全がんの原因の10%、女性の全がんの原因の3%を占めるという結果だった。

また、同じ割合を、アルコールが原因になるがん(口腔・咽頭・喉頭・食道・肝臓・大腸・女性乳房)に限って推計すると、男性では32%、女性では5%だった。
アルコールががんの発症に占める割合
【 すべてのがん 】
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【 アルコールが原因になるとされる7種のがん 】
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少量から中等量の飲酒は、心筋梗塞や脳梗塞などの心血管疾患のリスクを下げることが分かっている。しかし著者らは、飲酒ががんのリスクを上げ、しかも、ここまでならがんのリスクを上げないという飲酒量の上限がないことから、心血管疾患や総死亡率の低下のために飲酒を勧めるべきではないと主張している。

今回の研究はヨーロッパでのデータだが、その結果はおおむね日本にも当てはまると考えられるだろう。飲酒はストレス解消や人とのコミュニケーションをはかる上で有用だ。けれども、いくつかのがんのリスクが飲酒で上がることがはっきり分かっていることも、覚えておく必要がある。

いずれにせよ、飲むならほどほど(男性なら1日平均で日本酒1合程度、女性はその半分)にすることが大切だ。

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