2012年2月アーカイブ

Prevalence and risk of violence against adults with disabilities: a systematic review and meta-analysis of observational studies
http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(11)61851-5/fulltext

Karen Hughes PhD a, Prof Mark A Bellis DSc a , Lisa Jones BSc a, Sara Wood MSc a, Geoff Bates MSc a, Lindsay Eckley PhD a, Ellie McCoy MSc a, Christopher Mikton PhD b, Tom Shakespeare PhD b, Alana Officer MPH b

Summary

Background
About 15% of adults worldwide have a disability. These individuals are frequently reported to be at increased risk of violence, yet quantitative syntheses of studies of this issue are scarce. We aimed to quantify violence against adults with disabilities.

Methods
In this systematic review and meta-analysis, we searched 12 electronic databases to identify primary research studies published between Jan 1, 1990, and Aug 17, 2010, reporting prevalence estimates of violence against adults (aged mainly ?18 years) with disabilities, or their risk of violence compared with non-disabled adults. We included only studies reporting violence occurring within the 12 months before the study. We assessed studies with six core quality criteria, and pooled data for analysis.

Findings
Of 10 663 references initially identified, 26 were eligible for inclusion, with data for 21 557 individuals with disabilities. 21 studies provided data suitable for meta-analysis of prevalence of violence, and ten for meta-analysis of risks of violence. Pooled prevalence of any (physical, sexual, or intimate partner) recent violence was 24・3% (95% CI 18・3?31・0) in people with mental illnesses, 6・1% (2・5?11・1) in those with intellectual impairments, and 3・2% (2・5?4・1) in those with non-specific impairments. We identified substantial heterogeneity in most prevalence estimates (I2 >75%). We noted large uncertainty around pooled risk estimates. Pooled crude odds ratios for the risk of violence in disabled compared with non-disabled individuals were 1・50 (95% CI 1・09?2・05) for all studies combined, 1・31 (0・93?1・84) for people with non-specific impairments, 1・60 (1・05?2・45) for people with intellectual impairments, and 3・86 (0・91?16・43) for those with mental illnesses.

Interpretation
Adults with disabilities are at a higher risk of violence than are non-disabled adults, and those with mental illnesses could be particularly vulnerable. However, available studies have methodological weaknesses and gaps exist in the types of disability and violence they address. Robust studies are absent for most regions of the world, particularly low-income and middle-income countries.

Funding
WHO Department of Violence and Injury Prevention and Disability.

世界の全人口の15%は何らかの障害を持っており、また障害を持った人は健常者に比べて暴力被害に遭いやすいことが知られている。26の論文のメタ解析の結果、知的障害を持った人は(健常者と比較して)1.60倍暴力被害に遭いやすかった。精神障害の場合は3.86倍。特定不能のものも含め全障害の平均は1.50倍であった。
現役外科医の15%がアルコール乱用・依存
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/1202/1202062.html
米国外科医学会調査の横断解析
 米国外科医学会(ACS)のMichael R. Oreskovich氏らは,同学会が行った2010年の調査データを横断解析し,現役外科医の15%がアルコール乱用・依存であったと発表した(Arch Surg 2012; 147: 168-174)。過去3カ月の医療ミスの報告者の8割近くがアルコール乱用・依存だった。

Prevalence of Alcohol Use Disorders Among American Surgeons
http://archsurg.ama-assn.org/cgi/content/abstract/147/2/168
Michael R. Oreskovich, MD; Krista L. Kaups, MD; Charles M. Balch, MD; John B. Hanks, MD; Daniel Satele, BA; Jeff Sloan, PhD; Charles Meredith, MD; Amanda Buhl, MPH; Lotte N. Dyrbye, MD, MHPE; Tait D. Shanafelt, MD
Arch Surg. 2012;147(2):168-174. doi:10.1001/archsurg.2011.1481

Objectives  To determine the point prevalence of alcohol abuse and dependence among practicing surgeons.

Design  Cross-sectional study with data gathered through a 2010 survey.

Setting  The United States of America.

Participants  Members of the American College of Surgeons.

Main Outcome Measures  Alcohol abuse and dependence.

Results  Of 25 073 surgeons sampled, 7197 (28.7%) completed the survey. Of these, 1112 (15.4%) had a score on the Alcohol Use Disorders Identification Test, version C, consistent with alcohol abuse or dependence. The point prevalence for alcohol abuse or dependence for male surgeons was 13.9% and for female surgeons was 25.6%. Surgeons reporting a major medical error in the previous 3 months were more likely to have alcohol abuse or dependence (odds ratio, 1.45; P < .001). Surgeons who were burned out (odds ratio, 1.25; P = .01) and depressed (odds ratio, 1.48; P < .001) were more likely to have alcohol abuse or dependence. The emotional exhaustion and depersonalization domains of burnout were strongly associated with alcohol abuse or dependence. Male sex, having children, and working for the Department of Veterans Affairs were associated with a lower likelihood of alcohol abuse or dependence.

Conclusions  Alcohol abuse and dependence is a significant problem in US surgeons. Organizational approaches for the early identification of problematic alcohol consumption followed by intervention and treatment where indicated should be strongly supported.

Author Affiliations: American College of Surgeons, Chicago, Illinois (Drs Oreskovich, Kaups, Balch, and Hanks); Department of Psychiatry and Behavioral Sciences, University of Washington, Seattle (Drs Oreskovich and Meredith), and Washington Physicians Health Program (Dr Meredith and Ms Buhl), Seattle; Department of Surgery, University of California, San Francisco, Fresno (Dr Kaups); Department of Surgery, Johns Hopkins University, Baltimore, Maryland (Dr Balch); University of Virginia, Charlottesville (Dr Hanks); and Department of Medicine, Mayo Clinic, Rochester, Minnesota (Mr Satele and Drs Sloan, Dyrbye, and Shanafelt).

> "Oreskovich氏らよると,現役外科医におけるアルコール依存・乱用は一般人口における報告と差はなかったが,その影響はさらに重大である。"
京大、ギャンブルへの慎重さに脳内のノルアドレナリンが関与など研究成果を発表
http://release.nikkei.co.jp/detail.cfm?relID=303615&lindID=5魚拓
ギャンブルへの慎重さに脳内のノルアドレナリンが関与

 経済的あるいは社会的損失などの不利な結果を招くと予想されるにもかかわらず、ギャンブルを止められないギャンブル依存症は現在、家庭崩壊や犯罪の原因になるなど社会問題となっています。反対に過度に損失を恐れてリスクを取らない判断ばかりであると、ビジネスも学術も革新的な進歩は望めません。

 高橋英彦 医学研究科准教授(独立行政法人 放射線医学総合研究所(理事長:米倉義晴、以下、放医研)分子イメージング研究センター 分子神経イメージング研究プログラム(須原哲也プログラムリーダー)客員研究員)は、PETを用いて、利得と損失の双方の可能性があるリスク判断をする時に、利得よりも損失に比重を置く傾向の強さに脳内ノルアドレナリンが関与していることを世界で初めて明らかにしました。

 今回の研究では健常者を対象に、経済理論を用いて利得と損失の双方の可能性があるギャンブルに際して、利得と損失のどちらに比重を置くか検証したところ、多くの被験者は、理論通り、同額の利得と損失の可能性がある場合、損失に比重を高く置き、ギャンブルには参加しませんでした。また、利益の金額が少なくとも損失の何倍以上ならギャンブルに参加しても良いと思う金額(倍数)、つまり損失への比重のかけ方には個人差があり、典型的にはある損失に対して最低その約3倍の利得が見込まれないとギャンブルに参加しないことが示されました。

 被験者の脳内のノルアドレナリントランスポーター(以下NAT)の密度をPET検査で調べた結果、視床のNATの密度が低い人ほど、より損失に比重を置いて判断する傾向があるという関係が見出されました。

 これらの成果は、今後、ギャンブル依存などの依存に陥りやすい人等様々な依存傾向の客観的な評価およびその新たな治療戦略につながるものと期待されます。

 この研究成果はMolecular Psychiatryオンライン版に2月21日午前4時(米国東部時間)に掲載されました。

本研究成果のポイント
・脳内分子の画像技術と経済理論から利得と損失の双方の可能性があるリスク判断をする時に、より損失に比重を置く慎重さを計測
・脳内の視床のノルアドレナリントランスポーターの密度が低い人ほどより損失に比重を置いて慎重な判断をする
・ギャンブル依存に陥りやすい傾向の客観的評価や新たな治療戦略に貢献

背景
 私たちは、毎日の日常生活や仕事の上でも、将来の不確実なことに対して判断をしていかなければなりません。例えば、朝、家を出かけるときに降水確率が50%という天気予報を見て、傘を持っていかない人は、雨が降らなければ、身軽で得した気分になります。しかし、もし雨が降ったら大きな損害です。ビジネスの上でも今後の円相場が円高、円安どちらに転ぶかわからない状況で、円安になれば利益が上がり、円高になれば損失になるような商談について判断していかなければなりません。

 伝統的な経済理論では、意思決定者は常に合理的に判断し、理論に基づいて最も利益をあげる確率が高いオプションを選択するものと想定してきました。しかし、次の例を考えてみましょう。コイントスをして表が出れば1万円もらえて、裏が出れば1万円失うくじがあったとします。多くの人はこのくじには参加しないのではないでしょうか。伝統的な理論では利益、損失が同額でその確率も50-50%であれば、このくじ(期待値0)に参加しても良いと思う人は二人に一人程度いても不思議ではないと予想し、ほとんどの人が上にあげたくじには参加しないことを上手く説明できませんでした。ここで、表だと2万円もらえて、裏だと1万円失うくじを想定した場合、参加してもよいと思う人が増えてきます。これは同額の利益と損失がある場合、損失が利益に対して少なくとも2倍の心理的な影響を与え、慎重な判断をするのが典型的であることを示しています。

 期待値通りではない、一見非合理的に見える意思決定は必ずしも悪いものではなく、こうした非合理な意思決定が社会生活を豊かにしたり、円滑にしたりしている面もあります。しかし、非合理の度合いが行き過ぎるとギャンブル依存のような精神・神経疾患に認められる意思決定障害につながります。他方、過剰に合理的過ぎると、自分さえ良ければよいという考えにつながりかねません。

 そのため、実際の人々の消費行動や市場の動きを計算式からのみではなく、血の通った人間の行動や心理状態を考慮して、私たちの経済行動を研究する行動経済学という領域が発展してきました。

 行動経済学のパイオニアである TverskyとKahneman(後者は2002年にノーベル経済学賞受賞)らは、私たちは同額の利益を得ることより、同額の損失を回避する心理傾向が強いことを実証的に見出し、この現象を損失忌避と名付けました。コイントスの例も損失忌避の現れといえます。最近は、行動経済学からさらに進化して、神経経済学という経済的あるいは社会的な意思決定をしている際の脳活動を調べる学問も興隆しています。神経経済学の知見からも、人間の経済的意思決定は、常に合理的に計算しつくされたものではなく、情動に関わる脳部位が意思決定に重要な役割を担っていることがわかってきました。しかし、これまでの神経経済学は、機能的MRIを中心とした脳活動を調べるものにとどまっていました。

 本研究は、放医研の世界最高水準の分子イメージング技術を用いて意思決定にかかわる神経伝達物質である脳内のノルアドレナリンが、損失忌避にどのように関わっているかを調べた世界で最初の研究です。

研究手法と成果
 健常男性19名を対象に次の実験を実施しました。参加者には、実験に関する簡単な説明を受けた後、上記に挙げたような50-50%のコイントスに参加するかしないかの判断が求められます。ただし、表が出た時に得られる金額と、裏が出た時に失う金額は必ずしも同額ではなく、様々な当選金額と損失金額の組合せのコイントスが次々と出てきて、それに対して参加するかしないかを決めていきます。その結果から、各個人が利益と損失の双方の可能性があるリスクのある判断をする時に、より損失に比重を置いて判断する傾向の強さを推定します。損失に比重を置いて判断する損失忌避(慎重さ)の指標(変数)をモデル式に当てはめて、推定しました。その結果、多くの被験者は、理論通り、同額の利益と損失の可能性がある場合、損失に比重を高く置き、ギャンブルには参加せず、平均的にはある損失金額に対して少なくともその約3-4倍の利益が見込まれないとギャンブルに参加しないことが示されました。また、利益の金額が少なくとも損失の何倍以上ならギャンブルに参加しても良いと思う金額(倍数)、つまり損失忌避(慎重さ)の程度には個人差がありました。

 次にPET検査を受けてもらいました。脳内の NATの密度を検討できる(S,S)-[18F]FMeNER-D2という薬剤を用いてPET検査を行い、モデル解析により脳内の視床とよばれる部位のNATの密度の指標を定量しました。(図1)。

 損失に比重を置いて判断する損失忌避(慎重さ)の程度を表す変数と視床のNATの密度との関係を調べたところ、視床のNATの密度が低い人ほど、損失に比重を置いて判断する損失忌避の程度が強いということがわかりました(図2)。つまり、視床のNATの密度が低い人は予測される損失の金額よりはるかに高い利益が見込まれないと上記のコイントスに参加しない慎重な傾向があることがわかりました。

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今後の展開
 これらの成果は、今後、ギャンブル依存などの依存に陥りやすい人等様々な依存傾向の客観的な評価、治療効果判定およびその新たな治療戦略につながるものと期待されます。今後、この研究では、ノルアドレナリン以外の神経伝達物質が人間らしい非合理な意思決定にどのようにかかわっているかを明らかにし、人間らしい意思決定の分子レベルのメカ二ズム解明、および精神・神経疾患の意思決定障害の理解を深めることを目指します。

 本研究は、カリフォルニア工科大学、日本医科大学、慶應義塾大学、および早稲田大学との共同研究による成果で、また、独立行政法人 科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業 さきがけ「脳情報の解読と制御」(研究総括:株式会社国際電気通信基礎技術研究所 脳情報通信総合研究所長 川人光男)研究領域における研究課題「情動的意思決定における脳内分子メカニズムの解明」および、文部科学省脳科学研究戦略推進プログラム「精神・神経疾患の克服を 目指す脳科学研究」の一環として行われたものです。

<用語解説>
・分子イメージング
生体内で起こるさまざまな生命現象を外部から分子レベルで捉えて画像化する技術及びそれを開発する研究分野であり、生命の統合的理解を深める新しいライフサイエンス研究分野。体の中の現象を、分子レベルで、しかも対象に大きな負担をかけることなく調べることができる。がん細胞のふるまいの調査だけではなく、アルツハイマー病や統合失調症、うつ病といった脳の病気、「こころの病」を解明し、治療法を確立するための手段として期待されている。

・PET
ポジトロン断層撮像法(positron emission tomography;PET)のこと。画像診断装置の一種で陽電子を検出することによって様々な病態や生体内物質の挙動をコンピューター処理によって画像化する技術である。

・ノルアドレナリン
中枢神経系に存在する神経伝達物質であり、脳幹の青斑核から投射され、脳内に広く分布している。覚醒、集中、意欲、記憶などの働きがあり、ストレスを受けたときにも放出される。

・ノルアドレナリントランスポーター(NAT)
神経終末などに存在し、神経終末から放出されたノルアドレナリンを放出された近傍ですばやく再取り込みして、その活性を終了させる役割を担う。

・視床
大脳の中心部にあって、間脳に属する神経細胞群。視覚、聴覚、体性感覚などの感覚入力を大脳皮質へ中継する重要な役割を担う。意識、情動、記憶、注意など様々な機能に関わる。

・行動経済学
伝統的な経済学では、計算式や理論に基づき人間は合理的に振る舞うというのを前提としていたが、観察や実験を通して血の通った人々の行動や心理状態を重視して、人間の心理バイアスや認知が私たちの経済行動にどのような影響を与える研究する分野。ダニエル・カーネマン、バーノン・スミスはこの分野への功績で2002年ノーベル経済学賞を受賞した。

・損失忌避
利益と損失の双方の可能性がある意思決定に際して、より損失に比重を置いて意思決定をする傾向。つまり同額の利益を得ることより、同額の損失を回避する心理傾向が強いことを指す。

・神経経済学
行動経済学に端を派し、心理学、認知科学、経済学に脳神経科学が融合し、人間の行動選択、意思決定、消費行動を脳神経科学の観点から理解しようとする学際的分野で近年、急速に興隆している。

・(S,S)-[18F]FMeNER-D2
ノルアドレナリントランスポーターに対して高い親和性と選択性を有するレボキセチンという薬剤を放射性同位元素のフッ素-18で標識したもの。



ギャンブルにはまる人、脳に特徴 京都大が発見

http://www.asahi.com/science/update/0221/OSK201202210074.html魚拓

  ギャンブルにはまりやすい人の脳の特徴を、京都大の高橋英彦准教授(精神医学)らが見つけた。ストレスを受けたときに出て、ドキドキさせる脳内の情報伝達物質を回収してしまう「取り込み口」が多かった。ギャンブル依存症の予防などに役立つと期待される。米神経科学誌で21日発表した。

  高橋准教授らは、確率が五分五分のコイントスで、勝った場合の利益額と負けた場合の損失額を変えて、どの額なら参加するかを問う実験を男性19人で試した。その結果、利益額が損失額の8倍でないと参加しない慎重な人から、同額に近くても参加する人まで差が出た。

  次に、脳内の神経のつなぎ目(シナプス)から分泌された情報伝達物質「ノルアドレナリン」を回収する取り込み口の密度を、脳の画像診断装置で調べたところ、慎重でない人ほど高く、「同額ほどでも参加する人」は、「8倍でないと参加しない人」の約2倍だった。

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ギャンブルにはまりやすい人の脳の特徴

薬物依存の相談、5年で565人 県センター初公表
http://www.shinmai.co.jp/news/20120215/KT120214FTI090032000.html魚拓

 2006年度からの計5年間に県内の医療機関などに薬物依存に関する相談を寄せた人は延べ565人に上り、そのうち薬物依存の本人など相談対象者の4割に何らかの逮捕歴があることが14日、県精神保健福祉センターのまとめで分かった。同センターが5年間分のデータを公表するのは初。同センターは「薬物依存者は薬物を手に入れて使うことに執着する病気。医療機関や司法関係者が情報共有するなどの連携が必要だ」としている。

 長野市内で同日開かれた県薬物依存症対策推進会議で報告された。06年4月から09年9月と、10年4月から昨年9月までの計5年間に、県内の医療機関や保健所、薬物依存者を支援する民間団体「長野ダルク」(上田市)、同センターなどに寄せられた相談をまとめた。

 相談したのは本人が204人(36・1%)、親が171人(30・3%)。本人の年齢は30代が175人(31・0%)で最も多く、20代、40代と続いた。このうち薬物に依存している本人など相談対象者の223人(39・5%)について何らかの逮捕歴があった。

 また、初回の主な相談は「薬をやめたい(やめさせたい)」が116件で最多。治療希望や回復のための施設入所希望を求める人も多かった。

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 現在使用している薬物は覚せい剤が173人(30・6%)と最多で、向精神薬は114人(20・2%)。シンナーなどの有機溶剤は29人(5・1%)、合法ドラッグは5人(0・9%)だった。

 長野ダルク代表の竹内剛さん(50)は、本人や家族が相談を求めることから支援が始まるため、「相談窓口の確保が重要」と指摘する。

 同センターの小泉典章所長は「薬物依存者は依存症という病気」と強調。現在県内に2カ所ある、依存症者への回復プログラムを実施する病院を拡大することや、相談支援充実の研修会開催が必要―としている。
たいせつなことに気がつく 嗜癖精神医学は「鬼っ子」【医師レポート】
http://yaplog.jp/yuuki_sperm14b/archive/349魚拓

上記からのコピペですが、元ネタはおそらくこちら

シンポジウム 嗜癖精神医学は「鬼っ子」【医師レポート】
DSM-5ドラフトでは用語「依存」使用せず、その意図を読み解く
http://www.m3.com/open/academy/report/article/143507/
平成23年度アルコール・薬物依存関連学会合同学術総会
 松本俊彦(国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所)

 2011年10月14日に行われた平成23年度アルコール・薬物依存関連学会合同学術総会のシンポジウム「"物質依存"から"多様なアディクション"へ ―なにが違って、なにが同じなのか―」で、「アディクション概念の理解と意義」と題した発表の一部を報告する。

 2010年、米国精神医学会のワーキンググループは「DSM-5ドラフト」において、従来の「物質関連障害substance-related disorder」というカテゴリー名を、「嗜癖とその関連障害addiction and the related disorder」(2011年に入ってから「物質使用と嗜癖性障害substance use and addictive disorder」へとさらに改変」)と変更し、「依存dependence」という用語の使用を取りやめるという大胆な提案をし、専門家間で議論を巻き起こしている。

 嗜癖精神医学は精神医学の「鬼っ子」である。「嗜癖/依存症」という疾病概念は、米国の市民運動から誕生したという非嫡流的出自を持っており、医学はそれを追認し、もっともらしい形式に整えただけだった。そうした「付け焼き刃作業」ゆえに、1977年にWHOが定義した「依存症候群」が、後に様々な不整合を呈したとも考えられる。

 まずは、「嗜癖」と「依存」の相克ともいえる嗜癖精神医学の歴史を振り返り、なぜ今日、「依存」という言葉が消え行く流れになっているのか概説する。

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社会学的概念から医学的概念へ

 嗜癖/依存の問題は社会の発展と無縁ではない。依存性物質の多くは特別な日だけ楽しむ珍重品であったが、生活が豊かになるにしたがい日常的な嗜好品となった。やがて、様々な弊害が明るみになると、それに溺れる者は「嗜癖者」と呼ばれ、嘲笑の対象となる。

 米国では、建国(1776年)より約1世紀の間、飲酒にきわめて寛容であった。しかし、19世紀初頭、飲酒の社会的・医学的弊害が明らかになると禁酒運動が起こり、禁酒法(1919-1933年)へ発展した。一部の運動家は、「酩酊、不摂生、習慣的な飲酒はすべて病気」であり、「酒を適量に飲むことの延長線上にもたらされる自然な帰結である(=進行性)」と指摘しており、アルコール問題は「病気」として理解されるようになった。当事者による民間団体「アルコホリクス・アノニマス(A.A.)」は、発足以来一貫して「アルコホリックは、アルコホリズムという進行性の病気に罹患している」という疾病モデルを採用している。

 イェール・アルコールセンターのJellinekは、アルコホリズムをアルファからイプシロンという5つの臨床類型に分類し、うちガンマが中核群であると考え、(1)アルコールに対する耐性上昇、(2)離脱症状と病的な渇望によって証明される身体依存、(3)飲酒コントロール喪失の存在、という特徴を持つ病態と定義した。Jellinekは、「コントロール喪失」を重要な症候と見なしていた。「一杯飲んだらとまらない」という病気に罹患した者の飲酒行動は「原因において自由な行為」ではなく、免責、少なくとも情状酌量される必要性があると指摘している。1954年には、Jellinekらの努力が実り、米国医学会はアルコホリズムが正真正銘の医学的疾患であることを宣言した。

 だが、用語や概念は依然として混乱していた。「アルコールという物質使用のコントロール障害」と「物質使用の結果生じたアルコール関連障害」との混同を整理したのが、Edwardsを代表とするWHO専門部会であった。1977年、WHO専門部会は、これら2つの概念を区別し、その基底に「依存」という病態が存在するとした。さらに、アルコール依存を行動面・精神面・身体面という一連の特徴的症状から構成されると捉え、「アルコール依存症候群」と命名した。

 Edwardsらの定義は、Jellinekのガンマ・アルコホリズムの概念をそのまま発展させ、整理したものといえる。しかし、両者の間には力点の置き所に微妙な差異がある。Jellinekは「飲酒コントロール喪失」という精神面の変化(=精神依存)を、Edwardsらは「離脱症状」や「耐性」といった身体面の変化(=身体依存)を重視していたのである。

身体依存 vs. 精神依存

 身体依存を核とした依存概念には限界があり、依存症診断における身体依存の優位性に疑義が突きつけられた。例えば、終末期患者への鎮痛薬や一部の抗うつ薬などの投与による身体依存があること、中枢刺激薬(覚せい剤やコカインなど)には精神依存はあるが身体依存はないこと、催幻覚薬(大麻、LSDなど)では身体依存の存在が不明瞭なのに、習慣的使用を断ち切れない者が存在することなどである。

 もう1つ、依存症概念を揺るがしたのは、病的ギャンブリング、買い物依存などの病的浪費、過剰な性行動、習慣性自傷行為などといった嗜癖的行動に対する概念拡張(偏執狂monomania)である。判断力や知的能力が保たれ、思考障害や人格の荒廃がないにもかかわらず、特定の行動に対する内的衝動をコントロールできないという意味では、「コントロール障害=精神依存」ということができる。こうした患者の多くは、これらの行動の直前に強い緊張感と過覚醒的感覚を自覚し、行為遂行とともに緊張緩和や安堵感を体験しているが、この現象自体が嗜癖的行動と物質依存症との相似的な関係を示している。

 このように、「物質依存症の本質は身体依存か?精神依存か?」といった命題は、時を経て何度も議論された。しかし今日、問題の焦点はもはやこの次元には存在しない。洲脇によれば、依存性物質はそれぞれ異なった作用により、共通した脳内報酬系を形成しているという。この脳内報酬系は、中脳腹側被蓋野のA10細胞に起始し、中脳辺縁系ドーパミン神経路が中心となり、GABA神経系、グルタミン酸神経系などにより形成されている。つまり、依存性物質の本質は「脳内報酬系のドーパミンレベルを上昇させる」点にある。嗜癖的行動においても、脳内報酬系が関与している可能性が示されている。

 これだけの知見が提示されても、なおも「物質依存症と嗜癖的行動とを峻別すべき」と主張する臨床家、研究者は少なくない。嗜癖/依存症について我々が知っていることは、まだ全体のごく一部にすぎないのである。

DSM-5ドラフトにおける「嗜癖」概念の復活

 2010年4月に発表された米国精神医学の新しい精神障害診断分類案「DSM-5ドラフト」では、「物質関連障害」セクションに2つの重大な変更が提案されている。

 1つは、物質使用障害下位カテゴリーに存在した「依存」および「乱用」という概念が消失し、「使用障害」に一本化するという提案である。確かに、「依存」は身体依存に力点を置いた医学的概念である一方、「乱用」は文化や法令により規定される社会学的概念であり、分類として未成熟の部分があった。DSM-5ドラフトは、依存診断における身体依存の優位性を減じるとともに、乱用診断における社会規範に依拠する項目を削除したことで、逸脱的な物質使用の様態は、「使用障害」として一元的に整理した。必要に応じて重症度評価や生理学的依存の有無を追記することで、逸脱した使用様態を個別的に表現できるようになっている。筆者はこの考え方に賛成である。なぜなら、精神保健的支援において介入を要する問題は、物質依存だけではないからだ。「依存」という概念があるばかりに、精神科医療関係者のあいだに、「依存は医学的治療の対象だが、乱用は司法的対応、もしくは本人の自己責任」という誤解を招いている。

 もう1つの重要な提案は、「物質関連障害」の名称自体を、「嗜癖およびその関連障害」(その後、「物質使用と嗜癖性障害」に変更: いずれにしても「依存」という診断カテゴリーは消失している)へと変更するというものである。しかも、病的ギャンブリングをこの「嗜癖およびその関連障害」のセクションに含めることを提案し、将来の検討課題として、インターネット依存とセックス依存を提示している(その後、パブリックコメントを受けて、病的ギャンブリングは再び「衝動制御障害」のセクションに戻されている)。

 なぜ米国精神医学会は今さら「嗜癖」という用語を採用したのであろうか?――おそらく、この「嗜癖」という用語は、偏見を助長する侮蔑的表現としてではなく、より新しい意味をまとって復活したと理解するべきである。物質関連障害作業部会はこう説明している。「鎮痛剤やβ遮断薬のように、医学的管理下での薬物治療においても身体依存を呈する薬剤は少なくないが、だからといって、通常、これらの治療薬を服用中の患者は治療の対象とはならない。治療を要するかどうかの基準は、必ずしも身体依存の有無に依拠せず、どのくらいその人が物質使用にとらわれ、逸脱的・不適応的な行動をもたらしているかである」。この発言は、物質依存の中核的問題は、身体依存の有無ではなく、人が物質にとらわれ支配される事態――Jellinekのいう「コントロール喪失」であり、今日風にいえば、「精神依存」ということになる――であることを改めて確認したものである。いずれにしても、DSM-5ドラフトの考え方が2013年に正式に採用された場合、嗜癖/依存症臨床のあり方が大きく様変わりする可能性があるだろう。

 今日、アディクション/依存症は、単に依存性物質に関する概念だけにとどまらず、健康や社会的関係を破壊する習慣や衝動行為にまで広がりつつある。いまや精神科医療の現場には、患者によって様々なアディクション/依存症的問題が持ち込まれ、医師は助言と治療を求められている。その意味では、今この問題は、DSM-Ⅲ以降米国精神医学会のリストから消失した「神経症」に代わる、「21世紀の神経症」のポジションにあるといえるかもしれない。
薬物中毒者の脳に遺伝的異常、サイエンス誌
http://www.afpbb.com/article/environment-science-it/science-technology/2855840/8419577魚拓
2012年02月06日 16:05 発信地:ワシントンD.C./米国   

【2月6日 AFP】薬物中毒者は、衝動の抑制に関与する脳部位の異常を遺伝的に受け継いでいるとする研究が、2日の米科学誌サイエンス(Science)に掲載された。

 英ケンブリッジ大(University of Cambridge)のKaren Ersche氏率いる研究チームは、薬物中毒者とその兄弟姉妹、無関係のボランティアの脳を比較分析。その結果、薬物中毒者のきょうだいたちの脳には、本人が薬物中毒でないにもかかわらず、薬物中毒者の脳に見られる脆弱(ぜいじゃく)性の多くが確認された。

 これは、脳の脆弱性が家系に由来することを示唆している。薬物中毒者のきょうだいが中毒者にならなかった理由は、環境的な要因あるいは脳の他の部位の差異によると考えられる。Ersche氏は「恐らく、きょうだいたちには薬物依存に対する家系的な脆弱性に適応したレジリエンス(弾力性、回復力)が備わっているはずだ」と説明した。 

 研究チームは、一方が薬物中毒者でもう一方がそうでない50組のきょうだいと、無関係の健康な50組の対照群について、ある行動から別の行動にどれほどの速さで切り替えることができるかを見る反応抑制(stop signal reaction time、SSRT)検査で、被験者らがどれだけ衝動を制御できるかを調べた。

 薬物中毒者はうまく衝動を抑えられないことが知られているが、研究の結果、薬物中毒ではないきょうだいも対照群と比較して明らかにSSRT検査の成績は悪かった。

 また脳をスキャンしたところ、薬物中毒ではないきょうだいも前頭葉や、運動・認識・行動に関連する大脳基底核と前頭葉との連結部に、薬物中毒者と同じ脆弱性がいくつか見つかった。「ある個人が興奮系薬物依存症になる傾向は、自制を保てない脳の異常によってもたらされている可能性がある」と、Ersche氏は述べている。(c)AFP
海外論文ピックアップ Lancet Oncology誌から
チェルノブイリの健康被害、最も深刻なのは精神面への影響
エビデンスありは小児の甲状腺癌のみ
大西 淳子=医学ジャーナリスト
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/hotnews/lancet/201105/519693.html魚拓)(魚拓2)(魚拓3

 チェルノブイリ原子力発電所の事故が住民の健康に及ぼした影響を長期にわたって評価してきた米Roswell Park Cancer InstituteのKirsten B Moysich氏らが、2011年4月26日付のLancet Oncology誌電子版にコメントを寄せた。同氏らは、自らの研究も含めてこの事故の健康被害の正確な評価が非常に難しいことと、その理由を説明した。さらに同誌のエディトリアルは、同日付で、チェルノブイリの事故が住民の健康に及ぼした最大の影響は精神面に表れたという報告を紹介している。

乳癌や小児の白血病増加の疫学調査は設計に問題

 Moysich氏らは、チェルノブイリ事故を以下のように概説している。

 1986年4月25日、チェルノブイリ原子力発電所の4号炉では非常用の電源システムの実験が行われようとしていた。この原子炉は、現在では使われていない旧式の黒鉛減速軽水冷却炉だった。実験のために不安定な状態に置かれていた原子炉は、実験開始をきっかけに急激に出力を増したが、原子炉冷却用の水は失われた状態にあり、過剰な発熱が生じて、4月26日未明に水蒸気爆発と炉心溶融に至った。

 福島第一原子力発電所と異なり、格納容器を持たなかったチェルノブイリ原子炉では、続く圧力容器の爆発によって大量の放射性物質が拡散した。大気中に放出された核燃料は8~180トン、核分裂生成物(放射性物質)は30億~90億キュリーと推定されており、それらは風に乗って北西方向に飛散した。事故後数日間、正確な線量測定が行われなかったため、放出された放射性物質の正確な量を知ることはできない。

 爆発により数人の作業員が死亡し、消火に当たった消防士100人が大量の放射性物質に曝露した。黒鉛は10日間燃え続け、放射性物質の放出は約20日間続いた。100~200人が急性放射線症候群と診断され、うち約30人が早期に死亡した。その後10年間にさらに14人が死亡している。

 事故の際に放出された核種は主に放射性のヨウ素131とセシウム134、セシウム137だった。ほかに、放射性のストロンチウム89とストロンチウム90、プルトニウム234も放出されている。ヨウ素131の半減期は8日と短いため食物連鎖の中に入り込んでも短期間のうちに減衰する。だが、セシウムの半減期は2年から30年と長く、非常に広範囲にわたる汚染が発生した。ストロンチウムは半減期が52日から28年で、セシウムと同様の長期的な汚染を引き起こした。

 事故によって放出された放射性物質の量は広島に投下された原爆の400倍だった。だが、実は、1950年代から60年代にかけて行われた核実験では、チェルノブイリ事故の100~1000倍の放射性物質が放出されたと著者らは言う。

 チェルノブイリから放出された放射性物質の影響が最も大きかったのは、ロシア、ウクライナ、ベラルーシだった。汚染が最も深刻だった近隣地域では住民27万人が軽度から中等度の曝露(被曝線量にすると5~500mSv)を受けた。

 チェルノブイリの事故がその後の癌罹患率を高めたかどうかを調べた論文は数多く存在する。著者らは、国連が最初に公表したチェルノブイリリポートの作成に参加し、02年には、それまでに報告された研究を対象に疫学的レビューを行ってLancet Oncology誌に報告している(概要はLancet誌のWebサイト参照)。著者らはこの時点で、小児の甲状腺癌を除いて事故後に癌の罹患率が上昇したことを示す強力なエビデンスはないと結論していた。

 著者らと同様に、チェルノブイリ事故による汚染と小児の甲状腺癌の関係を示した2件の集団ベースのケースコントロール研究はいずれも、対象となった個々の小児の被曝線量を詳細に調べ、十分に選び抜かれた精巧な統計学的アプローチを用いて分析していた。それ以前に提供されていたエビデンスと組み合わせると、チェルノブイリ事故の結果として小児の甲状腺癌罹患が増えたという結論に疑問を差し挟む余地はなく、得られた知見は、チェルノブイリ事故と同様の事態が発生した場合に安定ヨウ素剤を配布、使用を促すかどうかの判断に利用できる、と著者らは述べている。

 一方で著者らは、チェルノブイリ事故による健康被害を評価する際に直面する壁について論じている。著者らが05年に報告した、小児の白血病がベラルーシ、ウクライナ、ロシアで増加している可能性を示した研究結果(概要はInternational Journal of Epidemiology誌のWebサイトを参照)については、試験設計に問題があったことを認めた。分析対象となったコントロールの小児の多くが事故による汚染がなかった地域から選ばれていたため、分析によって示された事故後の白血病リスクの有意な上昇は納得のいくものではないという。さらに、旧ソ連の構成国で疫学調査を行うことの難しさが正確な評価を妨げた。当時、それらの国は長期的な疫学調査の経験をほとんど持っていなかった上に、言語の壁は厚く、文化的な差は大きかった。さらに調査の対象地域が非常に広範で、全てをカバーすることが困難だった。著者らは、それらの問題も含めて試験設計に欠陥があったと考えている。

 また、ベラルーシとウクライナでは乳癌の罹患率が上昇したという報告があるが、記述疫学研究の結果であること、この研究が居住地域の汚染度に基づいて患者の曝露放射線量を推定していたことから、乳癌との関係については今後再評価が必要としている。放射線曝露による肺癌リスク上昇を報告している研究もあるが、やはり試験設計上の欠陥がデータの信頼性や正当性を脅かしている上に、喫煙の影響を放射線曝露の影響から完全に切り離すことは不可能との見方を示した。

 福島原発の今後について、著者らは、放射性ヨウ素とセシウムへの曝露を最小限に抑えるための努力の重要性と、汚染地域の隔離の必要性を強調した。

 著者らは、「痛ましいことではあるが、日本で進行中の原子炉事故は、放射性物質への曝露が癌リスクに及ぼす影響を評価するための新たな機会を提供する。日本は放射線疫学研究の長い経験を持つため、適切な調査を行うことができるはずだ。チェルノブイリ後の疫学調査を難しくした大きな要因の1つがソ連の崩壊を中心とする政情不安だった。日本は、地震と津波、そして原発事故を経験しても、政治的にも経済的にも安定しており、原発事故が健康に及ぼす影響の総合的な調査が可能と期待される。得られるデータは、今後そうした事故が発生した場合に国民に正確なリスク予測を伝えるため、また、公衆衛生担当者が有効な介入を行うために役立つはずだ」と述べている。

 原題は「25 years after Chernobyl: lessons for Japan?」、全文が、Lancet誌のWebサイトで閲覧できる。

見逃されがちな住民への心理的影響
 Lancet Oncology誌のエディターは、同じ4月26日に電子版で公開されたエディトリアルで、以下のように述べている。

 原子炉事故後、長期にわたって懸念される最大の健康被害が癌の罹患だ。原爆の生存者や被曝事故の被害者を対象とする研究で、放射性物質への曝露と白血病その他の固形癌(甲状腺癌、消化器癌、乳癌、肺癌など)が関連付けられているが、周囲の立ち入り禁止区域が適切に設定されれば、そうしたリスクを負うのは原発作業員にほぼ限定されるだろう。

 原子炉を冷却するために使用された放射性物質を含む水が海に放出されたため、海産物の汚染が懸念されている。また、農作物や水道水の汚染も報告された。福島原発から放出された放射性物質は世界各国で検出されており、米国でも大気、雨水、牛乳からヨウ素131が検出されたが、米国当局は、検出レベルは低く、国民の健康に悪影響を及ぼすことはないと強調している。

 日本政府と東京電力は、特に事故後初期に正確な情報提供を行わなかったとして批判されている。政府が4月12日に、国際的な基準に基づく事故の評価をスリーマイル島の原子炉事故と同じレベル5からチェルノブイリと同一のレベル7に引き上げたことについても、遅すぎたとの非難を受けている。

 だが、原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)は、福島の事故は、環境への影響という観点からはスリーマイル島とチェルノブイリの事故の中間に位置するもので、住民の長期的な健康被害が深刻になることはないとの予測を示している。

 チェルノブイリと比較して住民が不安になるのも無理はないが、チェルノブイリの事故の健康への影響については一致した見解は得られていない。UNSCEARは08年に、小児の甲状腺癌の6000例超はチェルノブイリの事故に関連付けられると結論したが、他の癌については事故との関連を示す明確なエビデンスはないと報告している。一方、民間団体のグリーンピースは、事故に起因する過剰な癌罹患者は9万3000例を超えるだろうとの予想を示している。

 日本では福島原発周辺の住民に対する甲状腺被曝のスクリーニングが行われているが、これまでのところ危険なレベルに達している人は見つかっていない。

 なお、原子力事故の心理的負荷は見逃されがちだが、実は国際原子力機関(IAEA)は91年に、チェルノブイリ事故の精神面への影響は生物学的なリスクに比べ非常に大きかったとの結論を公表している。国連のチェルノブイリフォーラムも、事故の最大の影響は住民の精神的健康面に認められ、放射性物質曝露が健康にもたらすリスクに関する情報が適切に提供されなかったことによって被害はさらに深刻になったと述べている。

 福島原発事故の長期的な転帰は明らかではないが、今後数年間、放射線量を監視し、適切な安全策を実施し、住民を支援するためには、正確な情報の広範な提供は必須だ、と著者らは述べている。

 エディトリアルの原題は「Japan's nuclear crisis」、全文が、Lancet誌のWebサイトで閲覧できる。

参考リンク:
チェルノブイリ20年の真実
事故による放射線影響をめぐって
http://www.aesj.or.jp/atomos/popular/kaisetsu200701.pdf

発達障害の精神鑑定から司法福祉へ

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子どもの事件の現場から(106)
発達障害の精神鑑定から司法福祉へ
http://www.aiben.jp/page/library/kaihou/2309_00_kodomo.html魚拓
会報「SOPHIA」 平成23年9月号より

岐阜大学准教授・精神科医
高岡 健

発達障害の過剰診断

日本の司法領域において、自閉症スペクトラム障害(広汎性発達障害)をはじめとする発達障害に関し注目が集まるようになったのは、2000年以降だ。当初は、これらの障害の見落としが問題だった。ところが、わずか10年あまりの間に事態は急転回を示した。自閉症やAD/HD(注意欠如/多動性障害)の過剰診断と言いうるような状況が、生まれはじめたのである。

観護措置の段階で、あるいは送致先の少年院で、単にコミュニケーションが上手でないという理由から、発達歴を十分に確認しないまま発達障害を有すると決めつけられた少なくない数の事例を、私は知っている。その結果、少年が有している精神疾患が見落とされたり、狭義の児童虐待やマルトリートメント(不適切養育)の結果としての言動を、障害のせいだと誤解してしまう事態が生じている。

たとえば、躁うつ病の躁状態による落ち着きのなさを、自閉症スペクトラム障害ないしAD/HDに伴う多動だと誤診された事例がある。また、児童虐待を被って育った少年の示す注意集中の困難を、発達障害に基づく特徴だと誤ってとらえた事例もある。そうなってしまえば、少年の処遇もまた、誤った指針のもとに置かれてしまうことは論を待たない。

情状の等閑視

加えて、もう1つ問題がある。少年が自閉症スペクトラム障害を有している場合でも、障害自体が直接的に非行をもたらすわけでは、もちろんない。にもかかわらず、関係者のまなざしが障害にのみ向けられると、少年をとりまく環境の影響その他の情状が等閑視されがちになる。

同僚たちとともに私は、加害少年が自閉症スペクトラム障害を有していると診断された、いくつかの事件について検討したことがある。そのうちの1つである教職員殺傷事件では、いじめを回避するために不登校を選択した少年に対して、教師や母親は不登校の意義を理解しようする姿勢を欠いていた。

同様に、「理科実験型」などと呼ばれる、毒物による殺人未遂事件でも、いじめの事実に周囲の大人たちは気づいていなかった。また、ある放火事件では、少年への暴力を伴う勉強の強要が、父親によって日常的に繰り返されていた。

このように、自閉症スペクトラム障害を有する少年が惹起した事件であっても、その背景には、いじめや不登校に対する無理解や、教育の名のもとに行われる虐待ないしマルトリートメントが介在しているのである。

しかし、障害以外の重要な背景が等閑視されると、いきおい少年の責任能力の有無にのみ関心が集中し、情状の検討を通じた少年への理解がおろそかになる。すると、少年の更生に向けた道筋は、せいぜい障害特性を訓練によって軽減するといった発想にとどまってしまい、少年の自己尊重感は回復しない。

司法福祉

このような現状を改善するためには、児童精神科医による精神鑑定の実施はもとより、精神鑑定書の内容を含む少年審判で得られた所見を、終局決定後の処遇過程に活用することが重要になる。このことは、発達障害及びその他の要因がどのように絡み合って非行への道筋を形成したのかを明らかにし、その道筋をいかに修整すれば、少年の自己尊重感の回復を通じて更生へと至ることができるかを解明する作業であるから、司法福祉そのものに他ならない。換言するなら、精神鑑定もまた、司法福祉の一翼を担うものとして位置づけることができるのである。

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