心の家路

断酒成功のために必要な3つの要素
Prerequisite for sobriety

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2004/05/11 

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<断酒成功のために必要な3つの要素>

普通の病気であれば、医者に行くのは「治療の意思がある」ということです。
痛かったり、苦しかったりという「辛さ」があり、それを自力では取り除けないからこそ、医者に診てもらって、その指示通りに薬を使い、注意を守り、早く健康に戻りたいと願っているのが普通です。

しかし、アルコール依存症の人の場合「治療の意思が乏しい」ことがしばしばです。治りたいと思っていないのであれば、治療が失敗に終わったとしても、不思議なことではありません。

治療を成功に導くために、必要なことが三つあると言われています。

1. 敗北を受け入れること。

先にも書いたように、普通の病気であれば、痛かったり、苦しかったりします。また、そこまでひどくなくても、何かの異常があって「このまま放っておくと大変なことになるんじゃないか」という不安があります。だからこそ、医者に行って検査したり、治療を受けたりする気になるのです。

しかし、アルコール依存症者の場合には「このままだと大変なことになる」という意識が薄いのです。身体が痛かったり、苦しかったりするのは、酒を飲みすぎたから仕方のないことで、病院でそれを治してもらえば「また飲めるようになる」と考えがちです。
またアルコールが原因のトラブルが家庭内や職場であっても、「だからこそ酒を飲まなくちゃやってられない」と他罰的な考えに囚われています。
そして、飲んでいることが苦しくても、「どうせ明日もそう変わらない一日がやってくる」という奇妙な安心感に包まれていて、「このままでは大変なことになる」という意識を持つのが難しいのです。

「このままでは死んでしまう」「このままでは家族を失ってしまう」「このままでは大切な職を失ってしまう」・・・「このままでは大変なことになる」という意識が芽生えることを「どん底体験」・「底つき体験」と呼びます。この体験こそが、依存症からの回復の大きなチャンスなのです。
失職や離婚という事件も、人生にとって見れば悲劇かもしれませんが、病気からの回復という面から見れば、まさに「天から与えられた最大の機会」になり得るのです。

しかし、そうした「底つき体験」も、孤独や家族というカプセルの中に閉じこもっていると、その事態の重大さが実感できないこともしばしばです。

自助グループには、病気のさまざまな段階の人がいます(居つきはしませんが出入りしてる人はたくさんいます)。その中には、病気の早い段階の人もいれば、すっかり重症の人もいます。そして、酒が止まらずに病気が進行し、死んでいく人もいます。
そんな人々の姿を見続けていると、その中に過去の自分の姿や、今後も飲み続けた未来の姿を見つけることができます。そして、自分の身に危機が訪れたときに、それを「底つき」としてチャンスに変えていくことができるようになります。

自分は酒によって、こんなにも痛めつけられてきたし、この先ももっと酷く痛めつけられ続けるという現実を知り、その現実を否定したり、拒絶したりせずに受け入れることが、回復の第一歩です。そのためにも自助グループは役に立つでしょう。

酒と戦って勝つ方法はないこと、自分の敗北を認めることが、回復への第一歩になります。

 

2.助けの必要を認めること。

「酒を止めるのは自分なんだから、自分さえしっかりしていれば良いんだ。誰も助けちゃくれないんだから、自分ひとりでやっていける」

大変威勢のいい言葉ですが、そのとおりに実行できる人ばかりだったなら、アルコール依存症の回復率はもっとずっとよい数字であるに違いありません。
「自分の意思の力で止めていける」という幻想を持つことこそが、アルコール依存症の精神病たるゆえんです。

意思の力はいつか敗北するということを知らず、自分流の断酒に挑んでは失敗を繰り返している。病気なのに治療を受け付けようとしない態度は、客観的に見ればこっけいです。暗闇が怖いから、大声で叫びながら歩いている少年のようなものです。

自助グループの中にいると、成功する人と失敗する人の違いが見えてきます。そもそも自助グループそのものが、お互いに助け合うことを目的としたものです。その中にいるだけで、実感は無くても助けられているものです。そうしているうちに、自分もまた助けを望んでいるのだということに気づいていきます。

そうして、助力を求めるようになって、初めて家族や、医者や、ケースワーカーの援助が意味を持つようになります。

助けを求めるから自助グループに来るのか、自助グループに来たから助けを求められるようになったのか、それは人によって違うでしょう。確かなことは、助力は一時ではなく、長く継続して必要だということです。

 

3.良くなりたいという願いを持つこと。

どんな病気も、良くなりたいと思わなければ、そのために努力しようという気にはなれないものです。
腕を怪我した人がギブスが取れた後に、痛さをこらえてリハビリに励むのは、元気に腕を動かしたいという願いがあるからでしょう。

多くのアルコール依存症者は、「自分で止められる」という突っ張りが取れた後に、「自分は止められないのではないか」という不安とも諦めともつかない感情を味わうようです。何度も何度も挑戦した断酒に、そのたびに失敗してきた経験が、そう感じさせるのかもしれません。

自助グループには、酒を止めることに成功している人がいます。そうした成功例の中に、未来の自分の姿を見出すことで、「自分もああなりたい」という希望が芽生えます。

また、酒で職を失ってしまった場合には、前と同じ条件の仕事を探すのは難しく、条件の悪い仕事になってしまいがちです。離婚した場合には、夫婦が元に戻るというのも簡単な話ではありません。また、借金を抱えている人もいます。こうした人たちの中には、単に酒が止まっただけでは、もはや十分に幸せになれないと感じている人も多いようです。しかし、自助グループの中には、同じような経験をしながら、なおもその人生に幸せを見出している人の姿を見つけることができます。

そうして見つけ出した自分の「未来像」が気に入らないとしても、ともかく「自分なりの幸せ」を見つけ出すことができます。
健康で幸福な生活をしたいと願うことこそが、回復の原動力なのです。

 


例えば自分の場合ですと、最初から「酒が止めたい」という強い願いを持ってAAにやってきたわけではありません。どちらかというと、半ば強いられるままに通い続けたと言ってもいいかもしれません。

しかし、続けるうちに、いつの間にか「このまま破滅するのは嫌だ」と思うようになって酒が止まり、何かの力によって助けられていることを感じるようになり、そして健康に生きていきたいと願うようになったのです。

その変化は短い間に起こったのではなく、ゆっくりとやってきました。今は「酒を止められて良かった」と心の奥底から思えるようになりました。与えられた助力に感謝することもできます。しかし、それまでには何年かの時間がかかったのも事実です。

<今日一日の積み重ね>