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AAの女性クローズド会場に、男性は入れないのですか?

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2007/06/28 

伝統1(長文のもの)

各メンバーは、アルコホーリクス・アノニマスという大きな全体の一部である。AAが生き長らえなければ、私たちの多くが確実に生命を失うことになるだろう。したがって私たちの全体の福利がまず優先される。しかし、個人の福利がすぐそのあとに続く。

伝統3(長文のもの)から

私たちの共同体は、アルコホリズムに苦しむ人すべてを含むべきであり、回復したいと願っている人はどんな人であっても拒んではならない。AAのメンバーであるためには、金のあるなしを問われることはなく、また、何らかの規則に服従する必要もない。(以下略)

(『アルコホーリクス・アノニマス』 p564)

AAワールド・サービス社の許可のもとに再録。

AAにはオープン・ミーティングクローズド・ミーティングがあります。

クローズド・ミーティングは基本的にAAメンバーだけが参加できます。もちろん、AAメンバーになりたいかどうか、それどころか自分がアルコール依存症なのかどうか決めかねているという人でも、自分にアルコールの問題があるかもしれないという人なら歓迎されます。それでも、本人だけの「閉じられた」ミーティング形式です。

オープン・ミーティングは「開かれた」ミーティング形式であり、基本的には誰でも参加することができます。本人だけでなく、家族・友人・同僚・医療や行政のスタッフなどなど、依存症の問題やAAに関心を持っている人なら誰でも参加できます。まったくそんなことに関心がなくて、かなり興味本位であったとしても、おそらくは歓迎されるでしょう。私たちは、依存症やその解決手段であるAAのことを、一般の人たちにも正しく知ってもらおうと努力しているからです。

AAで回復したいと願っている人を、私たちは拒むことができません。その人が犯罪者であれ、性病持ちであれ、文無しであれ、ともかくAAで回復したいと思っているアルコホーリクを追い出すことは「伝統3」に反した行動なのです。

一方で、その人が「どんな状態であっても受け入れなければならないか」というと、そういうわけにはいかないでしょう。例えば泥酔して大声を上げて暴れ、反抗的で誰にでも突っかかっていくような状態の人がミーティングにやってきたとします。しかし、例え彼が「ここで回復したいから入れてくれ」と言ったとしても、彼を迎え入れることは現実的ではありません。もしそうすれば、その晩のミーティングはめちゃくちゃになってしまうでしょう。一人のためにミーティングを台無しにしてしまうことはできません。それは「伝統1」の全体の福利に反するからです。
他のメンバーには落ち着いたミーティングが必要であり、それがないとAAグループが存続していけないのですから、仕方のないことであります。
おそらくその人には、他日に酒を切ってやってくるようアドバイスがされるでしょう。

僕は、幸いなことに自分が責任を持っているミーティング会場で、そんなに厄介なケースに対応したことはありません。でも、自分自身では泥酔して酒臭い息でミーティングに行ったことはあります。その時には、追い返されて当然だったのかもしれません。それでも我慢してくれた当時のメンバーに感謝しています。聞いた話では、会場で興奮して暴れる人・喧嘩をする人・禁断症状で幻聴が聞こえる人などなど、いろんなケースがあるようです。
どう対応すればよいのか、ケース・バイ・ケースで簡単な正解はないでしょう。ミーティング運営とは難しいものです。

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さてこのように、AAミーティングの種類は大別してオープンとクローズドのふたつです。クローズドの場合には「本人である」という条件がつくわけです。そして、さらにもうひとつ条件がついたミーティングをダブル・クローズドと呼んでいます。

ダブル・クローズドには「本人であること」以外に、もうひとつ何かの条件を満たさないと参加できません。僕の知るダブル・クローズドは3種類です。女性であることが条件の「女性クローズド」・30才以下であることが条件の「ヤング」・アルコール依存症以外の(おそらくは精神的な)病気を抱えていることが条件の「合併症」です。
(ヤングの場合には、自分がヤングだと思えばヤングであるという定義もあるそうですが・・・)。

このなかで、しばしば取りざたされ物議をかもすのが「女性クローズド」の存在です。理由はおそらく「ヤング」や「合併症」は本人の申告しだいであり、境界があいまいであるのに対し、女性と男性の間には明確な線引きが存在するからでしょう。
(本当はその境界はずいぶん曖昧なのですが、いまは脱線しないでおきましょう)

僕は男性なので、女性クローズドに参加したことはありません。そこでどんな「経験」が分かち合われているのか知ることはできません。伝え聞いた話を想像によって補うとするならば、女性という性特有の問題であって、男性が混じっていては話しにくい経験であろうと思われます。例えば男性であっても、性についてだらしない過去を持っているとか、正反対に億手であるということは、男女混合の場所では話しづらいことであります。または女性というジェンダー(社会的性)でないと共感しがたい事柄が分かち合われているのかも知れません。僕には正確なことは知りようがありません。ともかく、男と女の間には境があり、「女性だけ」の分かち合いの機会に需要がなくなることはないでしょうから、「女性クローズド」というのは今後とも存在を続けていくでしょう。

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ここからが問題です。「女性クローズド」の会場に男性がやってきてしまったらどうするか? 彼は迎え入れられるべきなのか、それとも拒絶されるべきなのか?

伝統1と伝統3を両立させ、理想を実現しようとするならば、答えはひとつしかありません(と僕は思います)。「AAはアルコホリズムに苦しむすべての人を含むべきである」のですから、「男性であるから」という理由だけで、彼が会場から追い出されて良いはずはありません。たしかにその会場にとって男性の存在は、とても邪魔なものなのかもしれません。「女性クローズド」の福利を損なっているのかもしれません。しかしそれでさえ、AAの半数の性の福利であって「全体の福利」ではないと考えられるのです。

しかしながら、彼を迎え入れるためには、いくつかの実際的な問題を考えなくてはいけません。たとえば、彼が女性クローズドの参加メンバーを困らせてやろうと考えた愉快犯であることが明らかな場合。そうでなくても、繰り返し継続的にやって来る確信犯の場合。そんな場合にさえ、皆が我慢しなくてはならないということはないでしょう。彼が問題なく参加できる周囲のミーティング会場を紹介されるなら、締め出されたとしても文句を言う筋合いはないように思います。
(逆にいうと、他に参加できるミーティングが無いような環境<例えば田舎>に女性クローズド会場を作るのは、若干の無理があるということかもしれません)。

一方で、何も知らず初めて訪れたAA会場が(不運にも)女性クローズドであった場合。あるいは旅先にあるAAメンバーが、強い飲酒欲求に駆られ、やっと探し当てたミーティング場が女性クローズドであった場合。そんな場合にさえ、彼らを門前払いしてしまうことが、僕には正しいことだとはとうてい信じられません。

結局のところ、ダブル・クローズドのふたつ目の条件が何であれ、それを実現しているのは、周囲のAAメンバーがその条件を尊重して守っているからこそ「事実上」ダブル・クローズドになっているに過ぎないのではないでしょうか?
私たちAAメンバーは特別なミッション(使命)を帯び、限られたメンバーしか参加しないグループ(集まり)をしょっちゅう作っています。たとえば常任理事会がそうですし、各地の委員会もそうです。ダブル・クローズド・ミーティングも、それぞれ「女性だけ」「若者だけ」「他の病気を抱えている人だけ」にしか共有できない経験を分かち合うという「特別なミッション」を帯びています。私たちは委員会を興味本位でめちゃくちゃにしたりしないのと同様に、ダブル・クローズド会場がそのミッションを成功させるよう、ふたつ目の条件を尊重しているのです。

『今こそ充実した生き方を』というパンフレットがあります。それは、高齢でAAメンバーになった人の経験をつづったものですが、そのパンフレットの性格はここでは関係がありませんので置いておいて、中のひとつの話を取り上げます。

70才でAAにつながったメンバーの話が載っています。彼は病み、病むことに疲れ果てて、AAに行く決心をします。彼はいちばん家に近い会場を選んで出かけるのですが、彼はそれが10代の若者のミーティングであることを知りませんでした。リーダーは14才の若い娘で、AAで飲むのを止めて6ヶ月です。彼は差し出された握手を拒み、「私は帰るよ。来るところを間違えたようだ」ときびすを返そうとするのですが、若者たちは「そんなことはありません」と彼を引きとめ、そして彼は世代の違いがギャップにならないことを知るのです。

時にはダブル・クローズドに珍客が混じりこむことがある。それが「伝統」が尊重されたあり方であるのに疑いはありません。

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しかし、別の視点から考えてみることにしましょう。AAの「12の伝統」はルール(規則)ではありません。それは「こうしたほうが良い」という経験の蒸留であって、それに反したからといって罰を受けることもありません。それに、伝統に従って運営した結果、例えば女性クローズド会場に毎回男性が混じってしまっているようでは、その集まりが「特別なミッション」を果たすことができなくなってしまいます。

ダブル・クローズドのミーティングは、少なくともそこに何らかの需要があるからこそ存在しているわけで、その需要を満たす目的が果たせなければ、存在の意味がなくなってしまいます。だから、実際的に考えるならば、ここまで書いてきたような理想を、個々のダブル・クローズド会場の事情も汲まずに、機械的に押し付けるやり方が正しいとは思えません。

女性クローズド会場が、男性を完全に閉め出しているからといって、それだけを理由に女性クローズド会場を、ミーティング一覧表から削るべきだと考えたり、実際に削ったりする行動は、「伝統」を忠実に実践しようという理想主義の表れなのかもしれません。しかし、それはやはり現実に目を向けていない理想主義にすぎないのであって、実務家の態度ではないでしょう。(この文章が何を意味するかというと、ダブル・クローズドを一覧表から削ろうという動きがあったり、また実際に削除されていたことがあったわけです)。

日本のAAは成長の段階にあることは疑いがありません(少なくともそう信じたいものです)。私たちは数の上でも成長する必要があるのは確かです。そのためには、現在ある資源を無駄なく活用していくということが欠かせません。「『伝統』を完全には実践していない」という、どこのグループにも、どこの会場にでもあり得る欠点を理由にして、特定の資源(つまりダブル・クローズド)を活用しないでおこうとする考え方には疑問を感じざるを得ません。私たちは「伝統」を字義通りに遵守したときにスピリチュアル(霊的)に成功するのではありません。スピリチュアルな前進のためには、まずバランスの取れた考え方が欠かせません。

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伝統の文言を振りかざすような教条主義が良いとは思いません。同様に、AA本来の目的を忘れるような意固地な排除の態度も良いとは思えません。現実のAA生活に応用できないのなら、ステップも伝統も真に身に付いたものとは言えません。

いずれにせよ、ダブル・クローズド会場の「二重に閉じられた状態」を実現しているのは、その会場の中ではなく、外にいるAAメンバーの良心であります。ですから、この問題はAAメンバー全員が当事者であり、決してダブル・クローズド会場の中にいる人たちだけの問題ではありません。

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