心の家路

アルコール依存・薬物依存の脳のSPECT画像
Spect imges of alcohol or drug abuser's brain

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2012/10/03 

Spect imges of alcohol or drug abuser's brain
アルコール依存・薬物依存の脳のSPECT画像

SPECT(単一光子放射断層撮影)という技術を使うと、生きている脳のどの部分にどれだけ血流があるか計ることができます。ガンマ線放射トレーサという微量の放射線を放出する物質を静脈注射すると、それが血流によって運ばれ、脳の組織に吸収されます。そこから放出されるガンマ線を検出器で捉え、(CTやPETやMRIと同じように)フーリエ変換によって2次元、3次元の画像にすることができます。これを「脳機能イメージング」と呼びます。

SPECT画像は、脳の代謝量を図にしたものです。活発に働いている部分は代謝量が多く、代謝量が少ないところはあまり機能していないわけです。だから、代謝量を画像にして見れば、脳のどこが活発に働いているか分かります。

この脳機能イメージングを精神疾患の治療に応用する研究をしているのが、エイメン(Amen)クリニックのエイメン先生です。エイメン先生はSPECT画像によってADHDをいくつかのサブタイプに分類したことで有名です。(クリニックのサイトには各サブタイプのSPECT画像も掲げられています)。

SPECT Galleryには、公開している2種類の画像についての説明があります。

Healthy Concentration ActiveまずActive Viewは、脳の活動の活発な部分の上位55%が青く描かれています。さらに活発に活動している上位15%が赤、最も活発な8%が白く表示されています。躁うつ病やジャイアン型のADHDの画像を見ると赤や白の部分が大きくなっています。

Healthy Concentration SurfaceSurface Viewは、同じく上位55%を描いていますが、脳の表面付近=大脳皮質の活動具合を見るためのものです。健康な脳では全体にわたってなめらかな穴のない映像になります。Surface View で凹んでいるところや、穴が空いているところは代謝が低い(=脳の活動が鈍っている)ことを示します。これは健康な人の脳なので、穴はあいておらず、全体的につるんとしています。(おそらく見やすさのために着色しているだけなので、色に意味はないはず)。

健康な脳の画像

上のふたつはいずれも健康な脳の画像ですが、健康な人の画像をさらに見てみます。

Images, Normal and Abnormalに健康な人の画像があります。

Brain Image, Top Surface Viewこちらの画像は、健康な人のSurface Viewです。上から見た図(図の上が後ろ頭、下が顔)。凸凹がなくなめらかになっていることに注目して下さい。

Brain Image, Underside Surface Viewこれは下から見た図。上が顔(前)。

(注意して欲しいのは、SPECT画像は脳の形状の画像ではないということです。以下の図の中には脳に穴が空いている画像がありますが、それは脳に実際に穴が空いているわけではなく、その部分の活動が鈍っているということです)。


脳卒中(脳梗塞)

Images of Strokes さて、分かりやすく脳卒中(脳梗塞)の画像。

Brain Imaging of Left Frontal Stroke, underside view脳の左半球(画像では右側)の血管が詰まったことで、その先の血流が低下し機能が衰えています。(穴が開いていたり凹んでいる部分は、脳のその部分の活動が衰えていることを示します)。
実際この人は右半身が麻痺し、言葉を失っています。

(この女性は喫煙者だったとあります)。


アルツハイマー

Images of Dementia versus Pseudodementia 次はアルツハイマーの人の画像。

Brain Images of Alzheimer's Disease, top viewBrain images of Alzheimer's Disease
70代男性。住んでいる場所や妻の名前、自分の名前も忘れた状態。
脳全体に機能低下が見られるが、特に前頭葉、頭頂葉、側頭葉に顕著な低下が見られます。


アルコール依存症

Images of Alcohol and Drug Abuse ではお待ちかね、アルコール依存の人の脳の画像。

比較対象として健康な人の脳機能イメージ(再掲)。Brain Image, Top Surface ViewBrain Image, Underside Surface View

アルコール依存症の人の脳機能イメージ。Long term effect of alcohol, Top ViewLong term effect of alcohol, Underside View

17年間週末に大酒した37才男性の画像。穴(機能低下)だらけです。

もう一つ長期間のアルコール乱用の画像。Long Standing Alcohol Abuse

アルコールや薬物の乱用(大量使用者)の脳には、行動をつかさどる前頭葉や側頭葉に、健康な脳には見られない異常が見られる。すべての薬物に共通する所見もあれば、種類によって異なるものもある。

アルコールとすべての薬物に共通するのは、毒物に起因する症状に似たもので、全般に機能が低下し、しわが寄り、不健康な印象を与える。健康な脳は大脳皮質全体に渡って一様な活動を示すのに対し、どの薬物の場合でも波を打つ荒れた海のような画像となる。これは有毒ガスにさらされたり、酸素不足を経験した患者の脳に似ている。私のアシスタントは「誰かが脳に毒を注ぎ込んだように見える」と感想を述べたが、そのとおり、気持ちの良い映像ではない。

使用物質に特有のパターンもある。コカインやメタンフェタミン(覚醒剤)の乱用者は、大脳皮質にたくさんの小さな穴が空いた画像となる。ヘロイン乱用者は大脳皮質全体に渡って機能低下が見られる。重度のマリファナ乱用では両側の側頭葉で機能低下があり、アルコールの乱用では脳全体に機能低下が起きている。こうしたSPECTの所見は断酒・断薬によって改善するが、長期にわたる使用による影響は数年断酒・断薬した後にも残存している。

SPECT画像は3つの点で役に立つ。まずアルコールや薬物依存症者の脳の三次元映像は乱用防止の教育に使える。二番目は、アルコールや薬物依存者に特有の否認に対して、SPECT検査の結果を示すことで否認を解く助けになる。三番目は、必要な治療を判断する手助けとなる。

Images of Alcohol and Drug Abuse より

 

断酒・断薬による希望

このページには「断酒による希望」という項目もあります。

まず乱用時の画像。Effects of drug abuse and alcohol abuse, surface viewEffects of drug abuse and alcohol abuse, Underside

下は1年間酒と薬を断った後です。

Drug and Alcohol Free One Year, surface viewDrug and Alcohol Free One Year, Underside
穴がふさがり、全体的にスムーズになっています。しかし、健康な脳と比べるとまだまだ凸凹しています。やはり脳の機能の回復には年単位の時間が必要なのでしょう。継続的に断酒していけばどの程度回復するのか興味があります。

このページにはアルコールの他に、コカイン、メタンフェタミン(覚醒剤)、ヘロイン、メタドンなどの薬物の画像があります。またマリファナも「スマート・ドラッグ」などと言っていられないほどの影響を及ぼすことが分かります。


ニコチンとカフェイン

ただ、もう少し身近な話をしましょう。ニコチンとカフェインです。

Long Term Effects of Smoking Nicotine
上の画像は、45才の人で、毎日タバコ3箱とコーヒー3杯を27年間続けてきた人の画像です。


統合失調症

Images of Bipolar Disorder and Schizophrenia こちらのページには双極性障害と統合失調症の画像があります。

統合失調症の治療前
Paranoid Schizophrenia Brain Scan Before Treatment - Top ViewParanoid Schizophrenia Brain Scan Before Treatment - Underside View
リスパダールによる1ヶ月の治療後Paranoid Schizophrenia Brain on RespiridoneParanoid Schizophrenia Brain Scan after Treatment


女性のPMS(月経前症候群)

Images of PMS 生理期間中の女性の脳

生理期間中(もっとも酷い時期)
underside surface viewtop down active view
下から見たsurface viewには前頭葉、側頭葉に機能低下。active view には帯状に興奮が広がっています(赤い帯)。

生理後一週間
underside surface viewtop down active view
surface viewでは全般的に機能回復し、active view では帯状の過活動が収まっています。

PMSは「気のせい」ではなく、本当にあるのが分かります。


強迫的ギャンブラー

Images of Obsessive Compulsive Spectrum Disorders 行為障害のグループ

強迫的ギャンブラー
underside surface view
中央に明らかな過活動の帯があります。集中困難で恨みを抱きやすい家系だそうです。
その後、GAへの参加とプロザックの服用により寛解とあります。


治療の効果

Images of Treatment 各種治療の効果に関するページ

ADD 注意欠陥障害、感情の障害

52歳の注意欠陥障害で、怒りの発作のトラブルを抱えている。左が治療前。右はアデロールとデパゲンによる治療の結果。
エイメン先生の専門だけあって、ADHDの画像はたくさん掲載されています。それを見る限り、成人のADHDは積極的に薬物治療すべきだと考えられます。

PTSDによるうつと不安

27歳女性。15才と22才の時に強姦の被害、虐待的な恋愛関係、14才から16才の間に友人8人の死を経験。うつ、不安障害、薬物乱用。左が治療前、右はEMDRとセントジョンズワートによる治療後。これは心理療法とハーブの組み合わせ。

アスペルガー症候群

12才のアスペルガー症候群の少年。左が治療前、右はジプレキサによる治療後。

健康な人
最後に比較用に健康な人のactive viewを。

SPECT検査による被爆量はX線撮影とほぼ同じで、被爆の心配はありません。

より多くの情報が必要な方は エイメン(Amen)クリニック のサイトを参照してください。